東京の被差別部落

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4.様々な大道芸の世界―乞胸(ごうむね)

        

 江戸時代、江戸の街角には様々な芸能の世界がありました。祭礼などの特別な日でなくとも、ちょっと大きな寺院の境内や広小路に行けば人々は日常的に何らかの芸能を目にすることができました。テレビも映画もなかった時代、これらの大道芸はもっとも庶民生活に密着した芸能であり、人々の数少ない娯楽でもあったのです。
 この江戸の大道芸を担ったのは、被差別民衆である非人・乞胸(ごうむね)・願人(がんにん)たちでした。

今日の大衆芸能に通じる乞胸芸の世界

 大道芸を生業とした乞胸(ごうむね)は、近世的な「被差別民」でした(詳しくは「乞胸」を参照)。
 江戸時代中期(1768〈明和5〉年から1843〈天保14〉年)に乞胸たちが住んだ下谷山崎町の町名主が、幕府に乞胸の様子を書き上げた文書が残っています。『文政四年下谷山崎町名主書上』と呼ばれる文書です。この文書に、乞胸たちが行っていた大道芸がどのようなものだったか、具体的に紹介されています。
 それによると、乞胸の大道芸とはつぎのようなものでした。
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 綾取(あやとり)、竹に房をつけ、これを投げ曲げ取る芸のこと。
 猿若(さるわか)、顔を染めて芝居する芸のこと。
 江戸万歳(えどまんざい)、三河万歳の真似をする芸のこと。
 辻放下(つじほうか)、玉かくし、あるいは手玉を使う芸のこと。
 操(あやつり)、箱に目鏡をつけ、中であやつりをする芸のこと。または人形をつかう芸のこと。
 浄溜璃(じょうるり)、義太夫節(ぎだゆうぶし)や豊後節(ぶんごぶし)の節をつけて語る芸のこと。
 説教(せっきょう)、昔物語に節をつけて語る芸のこと。
 物真似(ものまね)、堺町の芝居役者(歌舞伎)の口上を真似、あるいは鳥獣の鳴声をまねる芸のこと。
 仕形能(しかたのう)、能の真似をする芸のこと。
 物読(ものよみ)、古戦物語の本などを読む芸。
 講釈(こうしゃく)、太平記あるいは古物語を語り、講釈する芸のこと。
 辻勧進(つじかんじん)、芸のない者や女や子どもたちが往来に出て銭を乞うこと。
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 読んでいただければお分かりのように、今日でも大道芸や大衆芸能として残っているものがいくつかあります。実際、乞胸たちの芸に起源を持つ近代芸能はたくさんあります。明治維新後には劇場で行われるようになる大衆演芸も、もとはこのように街角からスタートしたのです。

(文責:浦本誉至史)

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