6.検察は無実の証拠を隠している
これまでに紹介してきた事実の他にも、石川さんの無実を示す新証拠は数百点にのぼります。確定判決のおかしさは明確で、棄却決定ですら言い訳に苦労するようになっています。
また、東京高等検察庁は、事件発生から30年以上もたった今日でも、裁判所に提出していない多くの証拠を隠しもったままです。なんと証拠のリストすら開示していません。法務省刑事局長は、狭山事件の未提出の証拠について「段ボール箱にして4〜5箱、積みあげれば2〜3メートルの高さ」あると言っています。これらは全て税金を使って集められた証拠です。そもそも、集めた証拠を裁判所にきちんと提出しなくて、どうして公平で公正な裁判が保証できるでしょうか。
狭山事件に対するこのような日本政府・検察庁の姿勢は、1998年末にジュネーヴでひらかれた国際人権規約委員会でも非難の的となりました。日本政府の代表(法務省)は、「刑事事件の証拠は、裁判長から提出するよう命じられれば出しているのだから、証拠隠しにはあたらない」と反論しました。しかし委員会はこの反論は詭弁であるとして、結局、日本政府に対して「刑事事件の証拠は十分に開示して公正な裁判を保証するように。事務的にできることならすぐおこなうべきだし、もしそのために法律改正の必要があればただちに改正作業に入るべきである」と正式に勧告しました。これは個別狭山事件に対する日本政府・検察庁の対応が問題となった上での結論です。(検察が未開示証拠を持ったままであることに関して、国内の専門家からも批判の声があがっています(「読売新聞」02.1/20記事)。