05年2月7日13時30分から、東京地方裁判所(第7刑事部)第511号法廷で「連続・大量差別はがき事件」の第2回公判がおこなわれました。当日は、浦本誉至史さんに対する名誉毀損の容疑について審理が行われました。
当日検察官は、被告に対する「起訴事実」を次のように朗読しました。
被告は、03年10月頃、「○○に住む浦本誉至史は特殊部落出身の穢多身分のとても賤しい男です。奴らは部落解放同盟という暴力団以上に恐ろしい団体を作っている。浦本もこの暴力集団の東京都連合会の役員をしている危険な活動家です。浦本には十二分に注意してください」などと被害者を誹謗中傷する内容を記載したハガキや、同内容をコピーした紙片を貼り付けたハガキを、被害者宅周辺の不特定多数人に送付し同人らにこれを了知させ、もって公然事実を摘示して被害者の名誉を毀損したものである。
裁判長から「今検察官が述べた事実に間違いはありませんか?」と聞かれたS被告は、はっきりとした口調で次のように述べました。
「間違いありません。全て私のやったことです」
被告の弁護人も「被告と同様です」と述べ、事実関係の一切を異議なく認めました。
ハンセン病元患者への差別手紙で再逮捕・追起訴
第2回公判の翌日、2月8日、S被告は浦本誉至史さんの名前・住所を騙って熊本の菊池恵楓園に差別手紙を出した容疑で、警視庁浅草署に再逮捕されました。そして、2月18日、東京地検から「私印偽造・同使用」の罪(刑法第167条第1項)で起訴されました。
S被告は、昨年11月から今年6月までの間に、菊池恵楓園に対して、「ハンセン病患者は人間ではない化け物。人間ではないものがホテルに泊まろうとは生意気だ。アイレディース黒川温泉ホテルに謝れ」などと記載した差別手紙を、5回にわたって送りつけていました。その内3通の差出人名に浦本誉至史さんの名前と住所を使用し、ハンセン病元患者の皆さんを差別すると同時に、浦本さんの名誉を侵害することを目論みました(残り2通の差出人名は、1通が別の被差別部落出身者の名前、もう1通は無記名でした)。
この件について菊池恵楓園入所者自治会は、「重大な人権侵害を受け、人間の尊厳を踏みにじられた。許せない」として、事実の究明と厳正な処罰を訴えていました。
被害者の浦本誉至史さんは、こうしたハンセン病元患者の皆さんの痛切な訴えに応えてS被告を追加「告訴」していました。
「脅迫」「名誉毀損」「私印偽造・同使用」など計9件の容疑で起訴
2月18日の「私印偽造・同使用」の罪での起訴によって、S被告は下記の計9件の容疑で起訴されたことになりました。
(1)浦本さんに対する「脅迫」
(2)浦本さん以外の4人に対する「脅迫」
(3)浦本さんに対する「名誉毀損」
(4)浦本さん以外の2人に対する「名誉毀損」
(5)浦本さんに対する「私印偽造・同使用」(菊池恵楓園に対する手紙)
被告は既に、これまでの二度の裁判の罪状認否の中で、これら9件の容疑の全てを認めています。
《参考》刑法抜粋
第167条 ◆私印偽造及び不正使用等◆
行使の目的で、他人の印章又は署名を偽造した者は、3年以下の懲役に処する。
2 他人の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。
第222条 ◆脅迫◆
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
第230条 ◆名誉毀損◆
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
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次回公判は3月10日
「連続・大量差別はがき事件」の次回公判は、下記の通り東京地方裁判所で開かれます。当日は、追起訴分のうち浦本さんに対する「私印偽造・同使用」(菊池恵楓園に対する手紙)の起訴事実の朗読と、罪状認否があるものと思われます。
日程:3月10日13時30分(開廷予定)
法廷:東京地方裁判所(第7刑事部)第511号法廷