
被差別当事者団体で構成する人権ネットワーク・東京は、2025年8月28日、「立憲民主党・ミライ会議・生活者ネットワーク・無所属の会」と「公明党」に、また、9月1日、「都民ファーストの会」 の予算要望ヒアリングに参加し、都知事および教育長宛ての「あらゆる差別を撤廃する都政の確立に向けた要望書」について説明した。尚、「公明党」は正式なヒアリングの場ではなく加藤都議が対応した。人権ネットワーク・東京からは、在日本朝鮮人東京人権協会、障害児を普通学校へ・全国連絡会、NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク、部落解放同盟東京都連合会のメンバーが参加した。
「あらゆる差別を撤廃する都政の確立に向けた要望書」は、12項目あり、ヒアリングの場では要求項目をすべて説明することはできなかったが、各団体から重点項目について説明し、差別撤廃、人権政策の確立を要望した。
重点項目の第1は、ヘイトスピーチ対策として「公の施設の利用制限」要件の改正。都は人権尊重条例で「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進」を掲げ、①啓発等を推進、②公の施設の利用制限、③拡散防止措置及び公表を具体的対策としてあげている。また、2019年度から2024年度まで45件のヘイトスピーチ事案を公表しているが、言い換えれば「公の施設の利用制限」がされていないことを示している。都が定めた「利用制限の要件」では、①ヘイトスピーチがおこなわれる蓋然性と②施設の安全管理に支障が生じる事態(安全性)の両方満たすこととなっている。これでは、「安全性」に問題がないことでヘイトスピーチ行為が許されてしまう。従って、「蓋然性が高いこと」が満たされれば「利用制限」を実施できるように見直す必要がある。
第2は、朝鮮学校への「私立外国人学校補助金」の支給再開。2010年度以降、東京都が都下の朝鮮学校に同補助金を不支給としている事実は、「東京都こども基本条例」が前提とする子どもの権利条約をはじめ、日本が批准する各種国際人権条約に違反するものであり、国連・人種差別撤廃委員会は地方自治体が朝鮮学校への補助金支給を再開することを求めている。例えば、2014年の第3回人種差別撤廃委員会の総括所見では、「委員会は、在日朝鮮人の子どもたちの下記を含む教育権を妨げる法規定および政府の行為について懸念する」と表明し、「高校授業料就学支援金」制度から朝鮮学校を除外しないこと、朝鮮学校へ支給される地方自治体の補助金の凍結または継続的な削減をおこなわないことを求めている。
第3は、共生社会の実現のためにインクルーシブ教育の推進。インクルーシブ教育に転換していくために、①少子化を理由に地域偏在を解消することなく定員を減らす施策は実施しないこと、②都教委は基礎的環境整備を徹底し、学校の合理的配慮が確実に行われるように指導すること、③インクルーシブ教育支援員の配置に『特別支援学校への就学が適当な児童生徒』という条件を除くこと等を要望した。
第4は、人権教育の推進。差別や偏見を解消する教育を実現するために、教育委員会の組織を拡充し、管理職のリーダーシップのもと学校経営計画に明示し、人権教育担当の教員と組織を形骸化させることなく、すべての学校で人権教育を充実させること。また、「外国につながる生徒への指導ハンドブック」の活用が一層求められる。国の在留資格などの制度変更もある中で、在留資格等に関わり、学校現場の教員や管理職が生徒への人権上配慮に欠ける認識のもとで活用されることがないようにすること等を求めた。
いずれの要求も東京都が本気で人権を重視しているかいないかを示す重要項目であり、国際的にも度々要請されている事項である。人権ネットワーク・東京は、今後も都議会と連携し、差別撤廃、人権政策確立を求めていく。