部落解放同盟東京都連合会

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第十 死体運搬についての,渡邊謙・中塘二三生   
共同作成の意見書の新規明白性と原決定の誤りについて

       

一 渡邊・中塘意見書,再意見書についての原決定の誤り

 原決定は,死体運搬方法に関する請求人の自白を引用したのちに,その供述の中に「被害者の死体を殺害現場から芋穴まで200メートル余りの距離を運ぶ間,持ち替えて担いだり,小休止を取ったか否かについては記載がない。しかし,その旨の供述記載がないことから,直ちに,運搬の途中で持ち替えや小休止を全くしなかった趣旨に解するのは,必ずしも当を得たものとはいえないというべきである」と判示し,渡邊・中塘意見書,再意見書にたいし,「両意見書の実験結果は,その前提において問題があり,本件死体の運搬に関する請求人の自白の真実性を疑わせるものとはいい難い」と判示した。
 しかしながら,両意見書は,請求人の自白どおりの条件で,被害者を芋穴まで運搬することが可能であったかどうかを実験により明らかにすることを目的としてダミー運搬実験を実施し,体力科学的考察,バイオメカニクスから見た運搬能力の考察を行ったものであり,死体運搬についての自白の虚偽架空性を余すところなく実証した。

二 死体運搬についての請求人の自白

 ところで上記の原決定が,運搬の困難性を感じとったうえでの結論であることは,その論旨からも明らかであって,念頭にいれておくべきことである。
 請求人の自白を引き出した捜査官らは,請求人を,大変な力持ちに仕立てあげている。なぜか。捜査官もまた,きわめて困難な作業であることを,経験則上知り得て,請求人にここで躓いてもらっては困るからであった。死体運搬についての自白の量から推して,それの何倍かにわたって,捜査官は請求人に質問をつみ重ねていると推測される。
 あるいは『小休止したであろう』とか,あるいは『肩にさげて運搬したのではないか』などである。
 もし請求人が真実被害者の死体運搬を体験しているのであれば,なぜに,「小休止」の事実を隠す必要があろうか。すでに重大なる犯罪を告白していることに徴して,一層このことは強調されてよいであろう。被告人が死体を運搬していないことは,自白と捜査過程ならびに両意見書を総合評価して明らかというべきである。
 原決定は,「小休止したことを自供していないから小休止していないとはいえない。」旨述べるのであるが,捜査過程を逐一,まじめに,公正に検討すれば,同判示が屁理屈にしかすぎないものであることを知りうるのである。
 新証拠である渡邊他一名の共同意見書が,請求人の,「死体を運搬した」旨の自白の真実性に合理的疑いを生ぜしめていることは明らかである。

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