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原決定は,請求人方に配布された昭和38年度手拭が捜査当局へ任意提出されて回収されているが,同年度手拭がM・S方に1本,I・S方に2本配られ,前者及び後者のうちの1本がいずれも未回収のままその所在が明らかでない疑いがあり,請求人方ではM方あるいはI・S方から同年度の手拭を入手し得る立場にあったと認めた確定判決に,合理的疑いがあるとはいえず,弁護人提出の証拠が確定判決の事実認定に影響を及ぼすとは認め難いとした。
しかしながら,これまで弁護人が新証拠および関係証拠によって確定判決の認定の誤りを立証してきた。すなわち,確定判決の判断の前提となる,I米店の手拭いがI・SならびにM・S方から各1本が未回収であるという事実そのものが,I・Sの作成した4枚のメモ(最高検保管中),回収された手拭い154本(前同)から否定されることが明らかである。また,弁護人横田雄一作成の昭和54年6月15日付報告書は,複雑な内容となっているI・Sの作成配布メモを論理的に解読し,I・Sの2本のうち1本およびM・Sは,配布されていないにもかかわらずIメモに氏名が記載されていることを明らかにしたものである。また,I・Sの昭和38年5月22付狭山所長宛上申書およびM・Sの昭和38年5月24日付員面調書によれば,同人らは事件当時から,1本も配布を受けていない(M)あるいは配布を受けたのは1本のみである(I・S)ことを申し述べているものである。確定判決認定の配布経路による請求人の本件手拭いの入手可能性はあり得ないことは明らかである。
本件手拭い捜査は,Iメモに氏名が記載されているにもかかわらず未提出の者について全く不問に付すなどのことをするとともに,捜査はしたが未提出の理由について裏付けがなく嫌疑が消失しないままになった者も残されるなど,およそ客観的証拠の指向するところに従ったところ請求人に到達したと言い得るものではない。本件手拭いの出所としては,特定の者に到達することは到底不可能な状況が残されているのである。原決定は捜査過程への疑問について何ら検討しておらず,新旧証拠を併せた判断をなしたものということはできない。
原決定は,論旨は,家人の工作という何の根拠もない予断にもとづいて本件犯行に使用された手拭いが請求人方に存在したとするものであり,それ自体において重大な欠陥を有している。
請求人方からは配布された昭和38年度手拭いが提出されている事実を軽視し,新旧証拠の総合評価にもとづく公正な判断を行わなかった原決定は完全に誤りであり,破棄されるべきである。
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