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3、犯行を立証するための証拠のとりあつかい方
そこで考えるに、原判決が(弁護人等の主張に対する判断)この「自白の信憑力について」の項において、被告人の自白(捜査機関に対する各自白調書のみならず公判廷の自白を含む。)につき、弁護人の、あるいは他に共犯者がおるごとき、あるいは自白に基づく物証の発見経過に捜査機関その他の作為が存するごとき口吻でその信憑力を争う主張を排斥するに当たり、「しかしながら、被告人は捜査の当初全面的に右各犯行を否認していたが、昭和三十八年六月二十日頃から一部自己の犯行(三人共犯説)を認めるようになり、次いで同月二十三日頃、捜査機関に対し全面的に自己の犯行である旨自白するに至るや、その後は捜査機関の取り調べだけでなく起訴後の当公判廷においても、一貫してその犯行を認めているところであり、しかもそれが死刑になるかも知れない重大犯罪であることを認識しながら自白していることが窮われ、持段の事情なき限り措信し得るものというべきところ、これを補強するものとして、云々」と述べて、以下多数の補強証拠を掲げ、要するに、自白を証拠の中心に据えて、これを補強する証拠が多数存在するという理論構成をとっているのであるが、当裁判所として原判決の事実認定の当否を審査するに当たっては、むしろ視点を変え、まず、自白を離れて客観的に存在する物的証拠の方面からこれと被告人との結びつきの有無を検討し、次いで、被告人の自供に基づいて調査したところ自供どおりの証拠を発見した関係にあるかどうか(いわゆる秘密の暴露)を考え、さらに客観性のある証言等に及ぶ方法をとることとする。
なお、科学的捜査の現段階においては、一般的にいって犯人と犯行とを結びつける最も有力な証拠の第一は、何といっても指紋であり、次いで掌絞、足紋、筆跡、血液型、足跡、音声(声紋)、容貌、体格、服装の特徴等が考えられるが、指紋以外は未だ決定打とはいえないであろう。ところが、当審における事実の取調べの結果によると、捜査官は、本事件においても脅迫状、封筒、身分証明書、万年筆、腕時計、教科書、自転車等について指紋の検出に努めたのであるが、ついに成功するに至らなかったことが認められる。しかし、指紋は常に検出が可能であるとはいえないから、指紋が検出されないからといって被告人は犯人でないと一概にはいえないのである。
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