部落解放同盟東京都連合会
資料室 狭山事件の資料室 狭山事件確定判決-INDEX 

理 由

はじめに

 本件控訴の趣意は、弁護人中田直人、同石田享及び同橋本紀徳が連名で提出した控訴趣意書(ただし、「第六、量刑不当」の部分は、昭和四八年一一月二七日弁論を更新するに当たり、これを棟述しないと述べた。)のとおりであり、これに対する答弁は、昭和三九年九月一〇日の当審第一回公判期日に、検察官から、論旨は理由がないと陳述し、同年一二月二六日検察官吉川正次名義の右答弁を補充する書面が提出されているので、いずれもこれを引用する。
 また、右第一回公判期日に弁護人から右控訴趣意書に基づいて弁論があった後、被告人から特に発言を求め、第一審においては訴因事実をすべて認めてきたのを翻して、「お手数をかけて申し訳ないが、私はN・Yさんを殺してはいない。このことは弁護士にも話していない。」と述べたことを転機として、控訴審の審理は、控訴趣意の本来の内容を大きくはみ出し、多岐にわたる事項について詳細な主張がなされ、そのため事実の取調べが長期間にわたって行われるという異常な様相を現出し、その間数次にわたり裁判官が更迭したこともあって、弁護人から、昭和四五年四月三〇日付更新手続における証拠に関する意見、昭和四七年七月二七日付証拠調請求についての意見陳述及び昭和四八年一二月八日付更新に当たっての弁論要旨等の意見陳述がなされたのであるが、これらは当審における事実の取調べの結果を織り込んだ新たな主張を含むものであるから、本来の控訴趣意書として取り扱うべきものとはいえないけれども、要するに、本来の控訴趣意の内容を補充し敷えんとする性質をもっていると考えられる。そして、これらに対応して検察官からも、昭和四五年六月一七日付の事実取調請求に対する意見書や同四九年二月七日付の意見書に基づいて意見の陳述があり、当裁判所としてみても、事実の重大性にかんがみ、自らも控訴趣意書に含まれない事項についてまで審理を進めてきたという現実を自ら否定するわけにはいかない筋合であるから、本来の控訴趣意書の内容をはみ出す部分についても事実の取調べをした結果を参酌して、順次判断を加えることとする。
 そこで、論旨を論理的順序に整理したうえで判断をしていくことにするが、それに先立ち、本被告事件における原審及び当審における審理経過の概要(捜査の経過を含む。)に触れておくことが、便宜であろうと思われる。

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