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第10 意義理由第10、同補充第3のうち、死体の運搬方法についての原決定の誤りをいう点について
所論は、要するに、請求人の供述によれば、芋穴まで実測200メートルの距離を何の困難もなく死体を運搬したことになっているが、実際は何度も途中休まなければ不可能なのであって、死体運搬についての渡邊謙、中塘二三生共同作成の意見書が、請求人の死体運搬に関する自供の真実性に合理的疑いを生じさせていることは明らかであるのに、この新証拠の新規明白性を否定した原決定の判断は誤りである、というのである。
しかしながら、原決定が指摘するように、死体運搬に関係する請求人の供述調書の記載を見ると、請求人は、捜査官に対して、自分は力が強く、仕事でもセメント袋2個(26貫=約98キログラム弱)を肩に担いで運ぶことがあり、本件では、死体の頭を右側にして、自分の両腕を死体の首と脚の下に入れ、抱えるようにして芋穴まで運んだ旨述べた記載があり、加えて、それぞれ「前へささげるようにして」、「前へ提げる(原文のまま)ように抱いて」運んだ旨の、また、「引きずっていった様な事は(ない)」旨の各供述記載があるが、被害者の死体を殺害現場から芋穴まで200メートル余りの距離を運ぶ間、持ち替えて担いだり、小休止を取ったか否かについては記載がない。しかし、その旨の供述記載がないことから、直ちに、運搬の途中で持ち替えや小休止を全くしなかった趣旨に解するのは、必ずしも当を得たものとはいえないというべきである。
所論は、渡邊・中塘意見書、再意見書を援用し、請求人の自白どおりの方法で、被害者の死体を殺害現場から芋穴まで約200メートルの距離を途中休むことなく運搬することは、科学的に考察しても不可能であり、請求人の自白は虚偽である、と主張するが、前記のとおり、両意見書の実験結果は、その前提において問題があり、本件死体の運搬に関する請求人の自白の真実性を疑わせるものとはいい難いのであって、同意見書等の明白性を否定した原決定の判断は、相当である。
論旨は採用できない。
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