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第8 異議理由第8、同補充第9 犯行に使われた手拭に対する原決定の誤りをいう点について
所論は、要するに、原決定は、犯行に使われた本件手拭の出所に関して、Mz・S方に一本、I・Se方に2本の手拭が配られたことは肯定できると考えられ、関係資料を検討しても、Isメモが操作当局の都合のよいように改ざんされた疑いは認めがたいとしているが、これまで弁護人が新証拠及び関係証拠によって立証してきたとおり、I・Se方の2本のうち一本及びMz・S分は配布されていないにもかかわらず、Isメモには氏名が記載されているのであって、確定判決認定の配布経路により請求人が本件手拭を入手する可能性はあり得ないことが明らかであるから、原決定の判断は誤りである、というのである。
しかしながら、確定判決審の関係証拠に、上告審において弁護人が提出した昭和52年4月26日付け上告趣意補充書の添付資料であるIs・T、Is・Kの各検面調書写し等を併せて検討すると、原決定が指摘するとおり、Mz・S方がIs米店の得意先であって、昭和37年暮れにも正月用の餅一斗を購入しており、Is・T作成の手拭配布先に関する便箋メモ4枚(Isメモ)には昭和38年度手拭一本の配布先としてMz・Sの氏名が記載され、配布済みを示す「レ」印が付されていること、Is・Kは、年賀2日目である昭和38年1月6日ころ、Mz方を訪ねて、年賀の手拭一本をMz・S本人も手渡したと明言していることなどから判断して、Mz・S方に年賀の手拭を配り落としたということは、考え難い。また、Isメモ中で、昭和38年度手拭を2本ずつ配布すべき得意先の一つとしてI・Seの氏名の上にペン書きで「2」と記載されており、Mz・Sの場合と同様、その氏名には配布済みを示す「レ」印が付されていること、Is・Kは、Mzに配ったと同じ1月6日ころ、年賀の手拭2本を持ってI・Se方を訪ね、奥さんに渡してきたと述べていることなどからして、Is・KがI・Se方に昭和38年度手拭を2本配ったということは、間違いないと言うべきである。
以上によれば、請求人方に配布された昭和38年度手拭1本に見合う手拭が捜査当局へ任意提出されて回収されているが、Mz・S方に昭和38年度手拭1本、I・Se方へ同年度手拭2本が配られ、前者及び後者のうち1本がいずれも未回収のままその所在が明らかでない疑いがあり、この両家と隣人ないし近い親戚として日頃から親しかった請求人方では、請求人方に配布された昭和38年度手拭1本のほかに、Mz方あるいはI・Se方から同年度の手拭を入手し得る立場にあったと認めた確定判決に、合理的な疑いがあるとはいえず、所論援用の証拠が確定判決の事実認定に影響を及ぼすとは認め難いとした原決定の判断は、相当である。
論旨は採用できない。
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