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第3 異議理由第3、同補充第10 殺害の態様に関する原決定の誤りをいう点について

              

《弁護側主張》

 所論は、要するに、被害者の死因は、絞頸による窒息であると認められるから、扼頸による窒息と断定する五十嵐勝爾作成の鑑定書及び五十嵐勝爾証言、さらには手掌で被害者の頸部を圧迫して殺害した旨の請求人の自白は、誤りであることが明らかになったとし、その理由として次のように主張する。すなわち、(1)原決定は、写真による再鑑定の証拠価値を一慨に低く見たため、五十嵐鑑定書の頸部外表所見についてなされるべき批判を欠落させ、ひいては重大な事実認定の誤りを犯している、(2)原決定は、本件死体の前頸部を横走する帯状の索条痕跡の存在について、これを索条による絞頸の痕跡であるとする弁護人ら提出の鑑定書、意見書を斥け、「五十嵐鑑定書の所見に照らして、これを索条による絞頸痕であるとすることは、納得し難い。」とし、その理由としては、後頸部に索条の痕跡が認められないということを強調しているのであるが、上山第2鑑定書が指摘するように、本件死体の後頸部においても幅広い軟性索条物による圧迫があったことが認められるのであり、原決定は、誤った前提に立って判断しているものといわなければならないし、さらに、原決定は、同決定のいう「褐色帯」の形成は死斑の出現が妨げられた死後現象としているが、上山第2鑑定書によれば、この蒼白帯Xは生前の絞痕であり、死亡直近のかなりの期間仰臥位に放置されていたことにより生じたものであって、原決定の判断は誤っている、(3)原決定は、前頸部に斜走する赤色線条痕の成因について、五十嵐鑑定に従い、これを木綿細引き紐による死斑とし、生前の絞痕であることを否定しているが、その理由の一つは同線条痕の色調が赤色であることのみをもって生前に生成されたとはいえないということであるところ、前頸部における他の損傷の色調と比較してそのようにいえないのみならず、五十嵐鑑定書添付の第5号写真によれば、線条痕相互の間隔と木綿細引き紐の山(谷)と山(谷)との間隔とが一致していないことは、同線条痕が木綿細引き紐によって形成されたものでないことの証左であり、また上山第2鑑定書が指摘するように、木綿細引き紐の外側に位置する皮膚部にその外郭を示すような死斑が出現してしかるべきなのにごく一部にせよ全く認められないことは、同線条痕が木綿細引き紐による死斑ではあり得ないことを示しているのであって、これらの点について原決定は何ら反論を加えておらず、理由不備の違法を犯している、(4)原決定は、前頸部の手掌面大の皮下出血の存在を疑問視する弁護側の鑑定書、意見書について、専ら黒白写真からの判定の困難性を理由としてこれを斥けているが、この判断は全く失当である、(5)原決定は、「本屍の殺害方法は、加害者の上肢(手掌、前膊又は上膊)あるいは下肢(下腿等)による頸部扼圧(扼殺)と鑑定する。」との五十嵐鑑定の証拠価値を維持したが、五十嵐鑑定のいう上肢あるいは下肢による頸部扼圧によっては前頸部の損傷C1のような著名な皮下出血痕は形成され得ない(上田鑑定書その他)上、前記のとおり、前頸部の赤色線条痕は纏絡された木綿細引き紐の死後の圧迫による死斑であり得ないこと、赤色線条痕、上山鑑定人が摘出した蒼白帯X及びその他の頸部の痕跡は、いずれも生前軟性索条物の圧迫の結果形成された索痕としてのみ説明可能であることに照らすと、頸部の諸所見は相互に矛盾することなく絞頸の痕跡として総合的に判断され得るのであるから、扼頸による他殺死とする確定判決を維持する原決定は全く誤っている、(6)原決定は、軟性索条物による絞頸が行われたとしても、確定判決を維持すべき結論は変わらないとしているが、原決定は、手掌による扼頸の自白に依拠した確定判決が採用しなかった別の自白(タオルによる絞頸)を援用するという誤りを犯している、すなわち、後者の自白は、3人共犯の自白から単独犯の自白へと大変遷した当日である昭和38年6月23日付け供述調書にただ1回現れただけであり、同調書は被告人の供述の大変遷の中で置き捨てられた信用性のない調書であって、本件第1次再審請求における特別抗告棄却決定以後の殺害の態様に関する裁判所の判断は、タオルによる絞頸の自白を含む同調書の供述の信用性を何ら吟味することなく、これを援用するという基本的な誤りを犯しているといわなければならない、というのである。
 そこで、検討する。

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《検討》

(1)五十嵐鑑定書及び第1審、確定判決審の各五十嵐証言(以下、これらを併せて「五十嵐鑑定」という。)によれば、埼玉県警察本部刑事部鑑識課警察技師である五十嵐勝爾医師は、昭和38年5月4日午後7時ころから約2時間にわたり、被害者方構内において、電灯の照明下で被害者の死体の外表検査を解剖を行い、採取した資料につき後に所要の検査を行って、同月16日までにかけて鑑定書を作成した。その所見と鑑定の結果によれば、被害者の死因は、窒息死と判断されるが、前頸部の圧迫痕跡(手掌面大の皮下出血2個など)が著明であるのに、頸部に索条痕、表皮剥脱はないことなどから、窒息は絞頸ではなく、扼頸によると認められ、また、その方法は、頸部に爪痕、指頭による圧迫痕が存在しないことなどから、手掌、前膊、下肢、着衣等による頸部扼圧による他殺死と推定されるとしている。
 関係証拠によれば、五十嵐鑑定人の行った頸部等の外表及び内景検査は、死体発掘の当日、被害者方構内において、夜間、電灯の照明の下で行われたのであり、決して良好な条件・環境下に行われたものでないことは確かであるが、死体発見時の様子を聞知していた同鑑定人としては、絞頸の可能性も十分念頭に置いた上で、頸部の創傷や変色部分について生活反応を調べ、生前の索条痕跡、表皮剥脱等の微細な変化がないか慎重に見分し、検討したであろうことは容易に推測できるところ、それにもかかわらず、同鑑定人は、外表観察と剖検の結果、前記のとおり、生前に生成した複数の圧迫痕跡が前頸部に著明であるのに、生前に形成された索条痕、表皮剥脱は頸部のどこにも発見できず、頸部の赤色線条群には生活反応が認められなかったことなどから、索条物による絞頸死の可能性を否定し、死因は扼頸であると判断し、さらに、その手段は、爪痕、指頭痕などが頸部表面に存在せず、前頸部の圧迫痕跡についても境界が明瞭でないことなどから、手指ではなく、手掌、前膊、下肢、着衣等による頸部扼圧と結論づけたのである。
 原決定も指摘するとおり、所論援用の鑑定書、意見書は、いずれも五十嵐鑑定書の所見の記述及び添付の写真(全身像の2葉、陰部の1葉の計3葉のみカラー写真で、その余はすべて白黒写真であり、しかも前頸部の状態全体を示すのは、顎を上げて、皮膚面を体軸方向に伸展して撮影した第5号写真1葉のみである。)を主要資料にしているところ、五十嵐鑑定人が具に観察した皮下、皮内の出血の範囲、色調及び周辺部の輪郭、表皮の変色部の色調変化、その周辺部の輪郭、褐色部の色調、剥脱変化の模様等の微妙な点についてまで、五十嵐鑑定書の記述あるいは添付写真の印影として、すべて的確に表現されているとは言い切れないことは自明であり、したがって、これらを基になされた請求人提出の鑑定書、意見書の判断は、その基礎資料において既に間接的・2次的であるという大きな制約を免れないといわなければならない。検察官提出の平成4年12月7日付け「再審請求に対する意見書」に参考資料として添付された石山イク夫(※イクは漢字)作成の平成元年2月23日付け鑑定書(以下「石山鑑定書」という。刑訴法435条6号の再審事由の存否を判断するに際し、再審請求後の審理において新たに得られた同鑑定書もその検討の対象にすることができることについては、最高裁平成10年10月27日第三小法廷決定・刑集52巻7号363頁参照)は、「再鑑定の確実な資料は主として当時の写真などであるが、原鑑定人の持っている第一印象(これこそが鑑定において最も重要なものであることはいうまでもない。)を写真そのものが表現しているとは限らないし、写真そのものが撮影時のもつ相当の歪みを示すことがある。本件のように色調が問題となる場合に、黒白写真を用いて検索するときには、慎重にならねばならない。」と指摘しているのである。写真による再鑑定の証拠評価についての原決定の判断は、相当である。
 以上の点を踏まえて、以下検討する。

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(2)索条物による絞頸の痕跡の存在について
 所論援用の鑑定書、意見書は、死体の前頸部を横走する帯状の索条痕跡の存在を指摘し、これを索条による絞頸の痕跡であると判定し、軟性索条物を用いて絞頸した場合には、著明な索条痕、表皮剥脱が残らないことがあるから、五十嵐鑑定書の頸部所見と矛盾しないというのである。
 しかし、原決定が指摘するように、索条物による絞頸死の場合、索条を頸部に一周させて緊縛するので、その圧力は前頸部、後頸部の区別なく、索条に接する皮膚組織に対してほぼ均等にかかるのであり、本件の場合、前頸部に横走状の暗赤紫色条痕、暗紫色条痕が生前形成されていることは、もしこれが絞頸に伴って形成されたとすると(上山第1鑑定書は、これらの条痕の成因を、軟性索条の上縁に相当する部位に皮内ないし皮下出血したか、索条間出血したものと説明する。)、短時間に相当強い圧力が頸部全周に作用したことを示しているはずであるにもかかわらず、五十嵐鑑定書の所見によれば、後頸部には、索条の緊縛により生じたと認められるような異常変化(索条痕、表皮剥脱、皮下出血など)は何らとどめていないし、前頸部にも、同鑑定書掲記のほかには異常はなかったのである。このような同鑑定書の頸部所見にかんがみると、後頸部の皮膚には、前頸部に比して圧痕が付きにくく、また幅広の軟性索条物の場合には表皮剥脱や著明な索条痕が生じないことがあり得るという一般論を前提とするにしても、本件を索条物による絞頸死と結論するのは、早計に過ぎるといわなければならない。
 上山第1、第2鑑定書は、前頸部を横走する幅広い褐色部(蒼白帯X)は、扼頸による圧迫をもってしては形成され得ず、これは索条物による絞圧痕であるというのであり、中山・横田平成5年2月実験報告書もこれら鑑定書に沿う証拠であるが、本件死体が長時間、深さ数十センチメートルの湿った土中にうつ伏せの姿勢で埋められ、不規則な凹凸のある底土と埋め戻された土との間で不均等に圧迫され、しかも頸部には細引き紐が一周していて、下顎部と前頸部との間にこの紐が挟み込まれていたという状況に徴すると、前頸部付近の表皮外側から内部に加わった圧迫は、前頸部の皮膚の皺襞の形成や細引き紐が前頸部に横走状に纏絡していたことなどの影響も加わって一様でなく、圧迫の分布が、頸部の外表曲面、これに纏絡横走する紐に沿って変化し、不定形の帯状に死斑の出現を妨げて、褐色帯を形成したと見ることができる。このような次第で、五十嵐鑑定書の所見に照らして、これを索条による絞頸痕であるとすることはできない。

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(3)前頸部において斜走する赤色線条痕の成因について
 五十嵐鑑定書が、これら赤色線条痕は生活反応がないから死斑であると判定したのに対し、上山第1、第2鑑定書は、痕跡が赤色であるということは生前形成を強く示唆しており、索条物による絞頸に際して見られる現象であるというのである。
 しかし、頸部の所見上、本件を絞頸死と見ることに疑問があることは、先に検討したとおりである上、確定判決審における五十嵐鑑定人の証言によれば、同鑑定人は、本件死体の創傷部位には、いちいちメスを入れて生活反応の有無を確認したというのであり、また、五十嵐鑑定書の所見に赤色とあっても、赤色と表現される色調には、実際上相当の幅があるのであるから、同色彩の記述をもって直ちにこれらの線条痕が生前に生成したと結論することが相当であるとは考え難い。先に述べた頸部に纏絡されていた細引き紐の状況にかんがみると、その縄目の凹凸が死斑に出たとする五十嵐鑑定書の見方は納得できるというべきである。五十嵐鑑定書添付の第5号写真は、前頸部の皮膚面を体軸方向に伸展した状態を撮影したものであるから、そのような状況の下における線条痕の走行方向、縞模様の間隔を基に判断して、うつ伏せで下顎を引いた状態で頸部に纏絡していた細引き紐の死後圧痕の可能性を否定するのは当を得ない。

(4)前頸部の手掌面大の皮下出血について
 所論援用の鑑定書、意見書は、五十嵐鑑定書掲記の前頸部に2個の手掌面大の皮下出血がある旨の所見を疑問視するのであるが、皮下出血の有無、大きさ等を五十嵐鑑定書添付の頸部の黒白写真から判定することには、大きな困難を伴うことは自明のことであるから、写真の上から、五十嵐鑑定書の所見どおりに皮下出血を確認することができなくても、そのこと自体は異とするに足りない。所論の鑑定書、意見書を検討しても、直接死体を具に見分した五十嵐鑑定人のこの点の所見に疑念を抱かせるまでのものとはいえない。
 以上の検討結果によれば、所論の掲げる鑑定書、意見書、実験報告書をもってしても、本件を扼頸による窒息他殺と判定した五十嵐鑑定の証拠価値を揺るがすには足りず、確定判決が肯定した殺害方法についての事実認定に影響を及ぼすものではないというべきであり、その旨の原決定の判断は、相当である。

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(5)ところで、石山鑑定書によれば、次のとおり指摘されている。
 @被害者の死体の頸部に存する平行斜走線条群の発生機序については、被害者の死体が長時間うつ伏せ状態で土中に埋没されていたことを考慮すると、それは、死体の頸部を纏絡して一周している細引き紐によって生じたものであり、それも死後の頸部の前屈により惹起された死後変化(死斑)によって生じたものである、A平行斜走線条群が死体の前頸部には明瞭に認められるのに、これと同様の変化は左側頸部に微かに認められるのみであり、後頸部にはこれとは別に平行縞が数条走行している上、平行斜走線条群はいずれも写真上ではその皮膚表面には特記すべき変化は認められないところ、このような平行斜走線条が絞圧作用によって生じた櫛間溝部の出血であったとすれば相当強い絞圧作用があったはずであり、何らかの変化が平行斜走線条群の皮膚表面に存在してしかるべきであるのに、その存在が認められないということは、平行斜走線条が絞圧作用によって生じたものではないからである、Bまた、絞頸作用の場合には頸部にほぼ均一の圧力が作用するということからすると、前頸部のみに強い皮膚表面の異常所見が認められるのに左右側頸部においてはごく微弱にしか異常所見が存しないという頸部の状況から見ても、絞頸作用があったとすることは困難である、Cさらに、死体の後頸部には著名なチアノーゼ状変化が認められるものの、この部分には絞頸時に見られるような索溝状変化は全く認められないのみならず、左右側頸部にも外力が作用したという根拠は認められないことからしても、絞圧作用があったとは見られない。
 また、石山鑑定書は、D五十嵐鑑定書により被害者の死体の頸部の皮下には広範囲にわたる出血が存在していたことが明らかであるから、生前頸部に対して圧迫性の外力が作用していたことは明白であるが、死体の頸部にいかなる外力が働いたかを判断すると、まず、平行斜走線条群については前記のとおり死後変化であって、死因とは無関係であると考えられる、E五十嵐鑑定書が生活反応を伴う皮膚変化であるという左前頸部に存するC1につき、写真分析によってもC1が生前に生じたものと認められる、FC1に見られる帯状変化が絞圧性に生じたものか、扼圧性に生じたものかの点について検討すると、頸部全体の所見、とりわけ後頸部には全体として均一なチアノーゼが発生しているにもかかわらず、索溝らしい変化が全く認められないことなどから、C1が絞頸作用によって生じたものでない、G被害者の死体の着衣状態で扼頸作用が加わったとした場合に最も考えられるのは、ブレザーとブラウスの襟を一緒に掴んで頸部を強く圧迫するとか、ブレザーの襟を掴んで圧迫した際にその下のブラウスの襟部分を巻き込んでしまうことであるが、それによって、主としてブラウスの襟の一部が後頸部と上背面の部分を水平に圧迫することになり、しかも外頸静脈が前頸部において圧迫されるので、後頸部における著明なチアノーゼの発生を無理なく説明できるとともに、C1の発生機序についても、C1の位置が胸骨の上方約9センチメートルのところにあることから見て、ブレザーの襟を掴んで扼頸作用を加えたりすれば丁度この部位に襟の縁が位置することとなり、被害者が頸部を左右に振ることによって、この部分に擦過性の表皮剥脱が発生することとなるから、C1は扼圧性のものである、H頸部に存する着衣を介して外力作用が加えられたのであれば、軟らかい布状物が作用したのと同じような痕跡しか残らないわけで、扼痕や爪痕がなくとも不自然ではない、と説明している。結局、石山鑑定書は、頸部扼圧を死因とした場合に剖検所見と矛盾する点がないことを確認し、死因は頸部扼圧及び着衣の一部の頸部絞圧作用と見ることができる旨鑑定しているのである。
 その一方、石山鑑定書は、I上山第1鑑定書が絞頸とする根拠として指摘する蒼白帯Xにつき、その存在を認めながらも、蒼白帯Xについては、被害者の死体がうつ伏せ状態で頸部を前屈させていたこと、細引き紐の纏絡及び頸部を前屈させることによって生ずる皮膚の圧迫、衣服等の襟の介在、荒縄による軽度の緊縛があったこと等を考慮すると、その発生は問題なく死体現象である、Jまた、上山第1鑑定書が、頸部に巻かれていた細引き紐の長軸と縄目のなす角度と実際に死体に存在する赤色斜走線条の長軸と圧痕のなす角度が同一でないから、この細引き紐によって皮膚変化が生じたということは当を得ない旨主張している点についても、同主張は写真上の計測に基づくものであるところ、写真上に表現されている平行線条群は皮膚に印象されたままの状態を不変的に表現しているわけではなく、その写真を撮った場合の皮膚の伸びの状態を検討しなければならないのにその検討がなされておらず、そのために誤った結論が出されたにすぎない、Kさらに、上山第1鑑定書が、五十嵐鑑定書において頸部に二つの手掌面大の皮下出血があるとした点につき、解剖学的に広過ぎると非難する点についても根拠がなく、五十嵐鑑定書の皮下出血の剖検結果の記載は、頸部の皮下組織には相当広い範囲に出血があったと解釈できるのであって、それに違和感を感じない、としている。
 石山鑑定書は、上山第1、第2鑑定書と同様、主として五十嵐鑑定書の記載と写真に基づく鑑定であるとはいえ、死体の発見状況や死体の姿勢、体位、頸部全体の状況を十分検討しているのであって、殺害方法についての確定判決の事実認定の当否を判断する場合には、石山鑑定書も検討の対象とすべきである。

(6)なお、原決定が殺害方法に関する請求人の自白内容を検討した上、仮に、所論援用の鑑定書、意見書の指摘するように、軟性索条物による絞頸が行われた事実があったと仮定したとしても、これは被害者の頸部に加えられた暴行が絞扼の併用である可能性もあるというものであって、このことから直ちに、請求人が、殺害の方法ないし態様について自分の経験していない虚構の事実を自白したとはいえないと判示しているのは、関係証拠に照らし是認できる。

 理由不備をいう点を含め、論旨は採用できない。

※《》内の小見出しは、当Site担当者が便宜的につけたものです。決定本文にはありません

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