部落解放同盟東京都連合会

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(12)最高裁判例及び法令の違反の主張について

 所論は、要するに、伝統的筆跡鑑定について証拠能力を認めた最高裁昭和41年2月21日第二小法廷決定(判例時報450号60頁)は、相応の筆記能力を有する人物の筆跡鑑定に関するものであり、本件は漢字を書く能力が極端に乏しく、手本の幹事を筆写(模写)した筆跡についての筆跡鑑定であって、同一の伝統的筆跡鑑定としても、本件についてはより複雑な鑑定作業を要し、かつ国語学上の筆記能力の程度についての専門的知見による鑑定作業を要するという重大な差異がある場合であるのに、確定判決及び原決定は、最高裁決定と異なる事案について、同決定に基づき「同一認定」を下したものであって、自由心証主義の濫用として最高裁判例及び法令の違反を犯している、と主張する。
 しかし、所論指摘の最高裁決定は、「いわゆる伝統的筆跡鑑定方法は、多分に鑑定人の経験と感(勘)に頼るところがあり、ことの性質上、その証明力には、自ら限界があるとしても、そのことから直ちにこの鑑定方法が、非科学的で、不合理であるということはできないのであって、筆跡鑑定におけるこれまでの経験の集積と、その経験によって裏付けられた判断は、鑑定人の単なる主観に過ぎないもの、といえないことはもちろんである。したがって、事実審裁判所の自由心証によって、これを罪証に供するとは否とは、その専権に属することがらであるといわなければならない。」と判示しているのであって、いわゆる伝統的筆跡鑑定について、所論指摘の事例に限って証拠能力を認めたものではないことはその判分上明らかであるから、所論は前提を欠くと言わざるを得ない。

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