部落解放同盟東京都連合会

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(3)木下第1意見書について

 所論は、要するに、木下第1意見書は、3鑑定が対照文字とした「ツ」「に」について統計的検定(平均値の差のt検定)を実施し、「ツ」については過誤の危険率0.4パーセント以下で、「に」については過誤の危険率0.3パーセント以下で、それぞれ「同一人の筆跡ではない。」と言明できることを証明したものであって、原決定は、木下第1意見書の近代統計学的方法を適用した厳正な聡明に基づく指摘を理解せず、3鑑定の証拠価値を減殺させた同意見書の指摘について、新旧証拠の総合的評価に基づく判断を誤ったものである、というのである。
 しかし、原決定が指摘するように、木下第1意見書は、本件脅迫状と警察署長宛上申書につき、関根・吉田鑑定書や長野鑑定書の指摘する類似点や共通する個性的特徴についての検討を全く行わず、両対照資料中の片仮名の「ツ」については、その第2筆と第3筆の長さの比だけを問題とし、高村鑑定書が対照資料とした本件脅迫状と内田裁判長宛書簡の平仮名「に」についても、専ら第2筆と第3筆を結ぶ連続線が第2筆と作る角度だけを問題にして、その余の要素は取り上げられないまま、異筆と結論づけているのであって、その手法は、手書き文書の筆跡異同の判断過程として余りに単純直載で、その妥当性には疑問があるとはいわざるを得ない。また、本件脅迫状に存在する「な」の第1筆と第2筆の連錦を、請求人の筆跡にはない特徴点として挙げるが、神戸鑑定書の項で述べたとおり、このような点は一般に必ずしも習癖化している場合ばかりとはいえず、書き手その時々の気分や、筆圧、筆勢などで変化するものと考えられるのみならず、現に、関宛昭和38年手紙のうちの同年11月12日付け、同月30日付け、12月17日付けの各書簡の中には「な」の第1筆と第2筆を連続させたものが存在する。したがって、同意見書の指摘の点を請求人の筆跡には存在しない本件脅迫状の筆跡の特徴として挙げるのは、相当でない。以上により、同意見書は3鑑定の結論に影響を及ぼすものとはいい難い。

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