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S被告控訴せず。「懲役2年」の実刑判決確定

「連続・大量差別はがき事件」

          

 2005年7月15日、「連続・大量差別はがき事件」の控訴期限がきましたが、S被告とその弁護人は同日24時までに控訴しませんでした。これによって7月1日に東京地方裁判所が出した「懲役2年の実刑有罪判決」が確定しました。

就職できない不満と、漠然とした部落差別意識から

 この事件は、なかなか就職できないことから社会への不満と強いストレスを抱えていたS被告(都内在住34才)が、かねて「自分より下で差別されて当然」と思っていた被差別部落を「徹底的に差別してストレス解消をはかろう」と考えておこした、極めて悪質な部落差別事件でした。
 被害を受けた被差別部落出身者は、全員被告とは一面識もなく、被告からこのような攻撃を受けなければならない謂われは全くありませんでした。また被告は、部落解放同盟や解放運動とも全く何の利害関係もありませんでした。
 被告は裁判で、「(自分や自分のストレスの中身とは無関係の)被差別部落を対象に選んだのは、前々から『被差別部落は自分より下の差別されて当然の存在』という漠然とした部落差別意識があったからだ。それから犯行直前に図書館で読んだ『同和利権の真相』という本に強い影響を受けた。被差別部落のことをあまり知らなかったので、この本に書いてあることは全て真実だと信じてしまった」。「部落差別は法律で禁じられていないのだから、(自分のストレス解消のために)やっても問題ないと思った」。「自分は体制側の人間だと思っているので、体制に反抗する被差別部落を許せないという気持ちもあった」などと、犯行動機を述べています。
 また、被害者の周辺住民にまで「誰々(被害者)は特殊部落民のえた非人。人間に似ていても人間ではない化け物。皆で町から追い出そう」などという手紙をばらまいて差別扇動を繰り返したことについて、「犯行当時自分には部落を差別する意識があった。自分の身の周りに被差別部落民が住んでいるとしたら、自分は本当にいやだった。被害者らの周辺住民も当然同じ気持ちのはずだ。だから自分としては、あくまでも親切心で教えてあげた。(手紙に書いたことも、当時本気で思っていたことで)決して悪意はなかった」と証言しました。
 被告は図書館にあった部落問題の本や団体の機関紙、それに電話帳や住宅地図などをもとに被害者とその周辺住民の名前・住所を特定し(注、被告がこのような「いいかげん」な方法を用いたため、多数の同姓同名被害や、実際は被差別部落出身ではないのに被告によって勝手に被差別部落出身者と決めつけられて被害を受けた被害者等が続出した)、1年半・約550日間にわたって総計400件以上の犯行を繰り返した。

「憲法に対する挑戦。重大な部落差別」(検察・論告求刑)  
「不当極まりない差別表現」で「被害者の苦痛大きい」(判決)

 2004年12月24日からはじまった裁判で、S被告は一貫して全ての犯行を認め、出所後には「部落解放同盟の糾弾を受けたい」と証言し、「反省」していることを強調しました。しかし被告の反省は、「人に知られたくない被差別部落の出身をばらしてしまって申し訳ない」「犯行当時自分に悪意はなかった。部落差別は法律で禁じられておらず、悪いことだとは思わなかった」「自分は東京生まれの東京育ちで、これまで学校でも家庭でも部落問題について学んだことがない。部落差別について正しい知識を身につける機会がなかった」というもので、被害者からは勿論、裁判所からも到底反省とは認められませんでした。
 2005年6月14日、検察官は論告求刑で、被告の行為は、「就職できないストレスを自分より下の存在を作り出し、それを差別することで埋めようとするもの」であって、「悪質な部落差別」である。「被害者らは被告とは全く無関係で、被告に何らの危害も加えていない。平穏な市民生活をしていた被害者らが、見ず知らずの被告からこのような差別を受ける謂われは全くない」、犯行はあまりにも的はずれで理不尽である。しかも被告は、極めて冷静に犯行を継続しており、起訴した9件以外にも400件以上にのぼる差別行為を繰り返している。犯行自体計画的で常習性が高い。一方、公判廷で示された被告の反省は不十分である上、被告が周辺住宅に差別扇動を繰り返したため、被害者らは今日もなお不当な二次被害にあっている。このことの重大性を、被告は今も認識していない。本件犯行は、「市民社会に対する重大な脅威」であり、また「基本的人権の保障を大きな柱とするわが国憲法への重大な挑戦」である。厳罰をもってのぞむほかない。などとして「懲役3年」を求刑しました。
 一方弁護側は、「被告に部落差別意識があったからこそこの様な犯行を行ったことは事実であり、被害者らの受けた被害も深刻だ」と指摘しながらも、「不十分ではあるが被告は反省している。また被告は初犯であって再犯の恐れもない」などとして、「執行猶予付きの寛大な判決」を求めました。
 7月1日の判決公判で、東京地方裁判所刑事第7部の上岡哲生裁判官は、「不当極まりない差別表現を執拗に記載し」、「被害者の受けた精神的苦痛は大きいものがある」、あまりに「身勝手で悪質」な犯行であって「被告人の責任は重い」。被告に有利な全ての事情を考慮しても、「なお実刑に処するのが相当である」と述べ、「懲役2年(未決勾留日数中140日を刑に参入)の実刑判決」を申し渡しました。

       

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部落解放同盟東京都連合会

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