Internetと部落差別-INDEX


1.インターネットの市民運動での役割

渕本 稔さん
人権ステーション

 いまやインターネット上の差別行為は非常に悪質化し、もはやマナーやエチケットの範囲を越え、法規制の必要性を痛感するほどです。
 なぜ悪質化するのかという基本的な問題ですが、インターネットの特性である匿名性によるところが大きいと考えます。
 しかし、その匿名性がインターネットの重要な部分でもあるので、まず、インターネットの優れた特性を説明した上で、市民運動にとってインターネットは有効な手段であることを理解していただき、そこを前提にしてインターネットを悪用した差別煽動に言及したいと思います。

インターネットは市民運動にとって有効な手段

 ご存知のとおり、インターネットはパソコンを電話回線で結び、それが世界中につながっている通信手段です。これまでの情報発信は、主にマスコミが行っていましたが、インターネットによってパソコンとソフト、そして電話があれば誰でも情報発信することができ、逆に情報を入手することもできます。
 自分のパソコンで作った文書や画像・音楽などを、いつでも自由に発信することができるのです。また、インターネット上に電子掲示板を設置すれば、そこに誰でも自由に書き込むことができ、そこに訪れた人全てが見ることが出来ます。また、メーリングリストという機能を使うと、一回文書を送れば、たとえ千人でも一万人でも、そこに登録した全てのメンバーに一瞬にして届けることが出来ます。それを見た人が返事を送れば、これまたすべてのメンバーに届くのです。
 このようにインターネットは、一昔では考えられなかったほど優れた情報通信の手段で、しかも手軽に個人でも活用することが出来るのです。この特性を利用して、軍事政権下にある民衆が、言論統制をかいくぐって圧政の実情をインターネットに乗せて世界中に発信し、そこから国際的な批判の声があがり、民衆の運動を支援するということも行われています。また、対人地雷禁止国際キャンペーンのように、NGO運動がインターネットを活用して連携しあい、国際社会の世論を動かして国連で条約の制定にまで持ち込むという成果もあげています。
 アメリカのある都市で、中国系の人が自動車を買う目的からディーラーを訪れたところ、一人の社員から人種差別の言動を激しく受け、抗議しても聞き入れられなかったので、この実情をインターネットで発信しました。するとアメリカ全土から、そのディーラーに抗議の電子メールが届き、責任者は謝罪すると同時に、差別を行った社員を解雇するという出来事も起きています。
 日本においても、電気メーカーが製品の故障に対する対応が悪かったので、そのことをインターネットで公表すると、そのメーカーに抗議の電子メールが殺到して、メーカーの社会的信用が著しく失墜するという出来事もありました。
 これらは、インターネットの利点をうまく活用した例といえます。その反面、悪用する人が後を絶たないのも現実です。

(つづく)


Internetと部落差別-INDEX

Site Meter