全国統一応募用紙 性別欄削除など改正



 高校生が就職の際に使用することが定められている「全国高等学校統一応募用紙」(統一応募用紙)が改定されました。2025年度高卒者から適用されます。主な改善点は、「履歴書」の「性別欄」が削除されたことで、この間、就職差別撤廃に向けて取り組んできた成果と言えます。一方、近畿地方で策定されている「近畿統一応募用紙」は先進的で、5年前の2020年に性別欄が削除されています。

 統一応募用紙は、生徒が記載する「履歴書」と教員が記載する「調査書」で構成されていて、今回の改定では、「履歴書」は、①性別欄を削除②学歴・職歴欄を在籍校欄と職歴欄に分離③趣味・特技欄を削除④志望の動機欄を志望の動機・アピールポイント欄に変更、「調査書」は①総合的な学習の時間の欄に「探求」を追記②身体状況欄を削除③本人の長所・推薦事由欄を本人のアピールポイント・推薦事由等欄に変更④特記事項欄を追加⑤押印を削除、となりました。「履歴書」の性別欄、「調査書」の身体状況欄が削除されたことは評価できますが、「調査書」には性別欄がそのまま残ってしまったこと、公正採用選考先進国では実現している「履歴書」の写真貼り付け欄が削除されなかったことは残念でなりません。

 統一応募用紙の歴史は、1973年に厚労省、文科省、全国高等学校長協会によって制定されました。それ以前は、事業所独自の応募用紙が使用されていて、本籍や親の職業など、本人の適正や能力とは関係のない事項の記入が求められ、被差別部落出身者を不採用とするなど、就職差別が後を絶ちませんでした。その後も公正な採用選考の実現に向けて見直しが続けられ、1996年には「本籍」「家族」「胸囲」「色覚」欄が削除され、「男・女」選択から「性別」記載欄に改定されました。そして1999年には「職業安定法」が改正され「5条の4」(現在は「5条の5」)(求職者の個人情報の取扱い)が追加され、あわせて「労働大臣指針」が出されたことで法的根拠に則り、就職差別につながる恐れがある個人情報の収集を禁止するための行政指導が進められてきました。

 東京労働局が取りまとめている高等学校卒業者の採用選考等に係る不適正項目では、毎年、面接時に家族の構成や職業、出身地を聞かれたり、統一応募用紙以外の書類などの提出を求められたりした事例が報告されています。実態把握と点検、企業指導のために就職活動をおこなう生徒から「受験報告書」を出してもらうなどの取り組みも重要です。

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