主張

人権意識の悪化傾向を踏まえ、量と質ともに拡充した効果的、計画的な人権教育・啓発・研修の実施を



 都連は、2025年9月12日、「2026年度部落解放事業要求書」を東京都に提出する。

 来年、2026年は、「部落差別のない社会を実現する」ことを目的とした「部落差別解消推進法」が成立、施行してから10年を迎える年であり、国も東京都も目的達成に向けた成果と課題を明確にするべきである。

 また、「東京都人権尊重条例」は「いかなる種類の差別も許されないという、オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透した都市となることを目的」としているが、「人権に関する都民の意識調査」の結果を見ると「一層浸透した」どころか悪化傾向さえ見せており、教育や啓発の強化が求められている。

 法務省及び文部科学省は、2025年6月、「人権教育・啓発に関する基本計画」第2次を発表した。法務省は、第一次基本計画からの主な変更点として、(1)「ビジネスと人権」に関する記載を追加したこと、(2)「インターネット上の人権侵害」を各人権課題に横断的な課題として整理したこと、(3)「ヘイトスピーチ」及び「性的マイノリティの人々」を個別の人権課題に追加したこと、(4)「感染症の患者等」から「ハンセン病患者・元患者及びその家族」を独立させたことをあげている。

 インターネット上の誹謗中傷や人権侵害については、「情報流通プラットフォーム対処法」が4月に施行され、総務省のガイドラインでは、部落差別や識別情報の摘示などは、「私生活の平穏などの人格的利益の侵害」にあたり削除対象になることを示した。そして、一定規模以上のプラットフォーム事業者も指定し、今後、これらの事業者は、法律に基づき削除基準の作成・公表、相談窓口の明確化などの具体的作業に入っていくことになる。東京都は、この施行を踏まえ、行政として、周知・相談・支援の対策を講じるべきである。

 今年の6月、都議会議員選挙が実施され、「都民ファーストの会都議団」32名、「都議会自由民主党」22名、「東京都議会立憲民主党・ミライ会議・生活者ネットワーク・無所属の会」22名、「都議会公明党」19名などの会派も成立し新たな議会体制のもと議会活動が始まっている。

 人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透し、あらゆる差別を許さない東京都をつくるために、これまでと同じことを繰り返すのではなく、差別の現実や人権意識の悪化傾向をしっかり踏まえ、量と質ともに拡充した効果的、計画的な人権教育・啓発・研修の実施が最低限必要であり、十分な予算が確保されなければならない。そのために、都議会とも連携しながら、反差別社会連帯の力で、2026年度予算要求を強めていこう。

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