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2010年5月13日

 朝鮮学校への遅滞・差別なき「高校無償化」制度適用を求める声明

 人権白書Tokyo実行委員会
実行委員長 八柳 卓史

 去る4月1日に施行されたいわゆる「高校無償化」制度では、一般の高校(学校教育法上の一条校)のみならず、専修学校、また各種学校の中でも朝鮮学校などの外国人学校については、当初、「高等学校の課程に類する課程を有する」ものとして適用することが予定されていた。
 しかし既報のように、中井拉致担当相が、朝鮮民主主義人民共和国との外交問題を持ち出し、「対北制裁」を理由に朝鮮学校を除外せよと主張するや、鳩山首相も一度は「ひとつの案だ。そういう方向性になりそうだと聞いている」(2月25日)とその考えに理解を示すなど、各種学校認可を得ている外国人学校の中で朝鮮学校の生徒のみが、適用から外されることが憂慮される事態となった。
 その後、産経新聞を除く全国紙、また地方紙の多くが除外反対の社説を書き、法曹界からも日本弁護士連合会会長声明をはじめ各地の弁護士会からの会長声明が続けざまに出ており、また国連人種差別撤廃(条約)委員会からも排除を促す政治家の動きを指弾する勧告が出るなど、除外の動きは国内外から猛烈な批判に晒されるところとなった。
 しかし、国会審議を経て日本政府・文科省が出した結論は、既報のように、朝鮮学校は他の外国人学校とは別に、有識者らでつくる「検討の場」を設け、そこで客観的基準を立てて、審査し、その結果をもって夏頃に判断を出すというものだった。
 朝鮮学校は、教授言語が基本的に朝鮮語、また朝鮮語などの民族教科もあるものの基本的には日本の学校と同様のカリキュラムとなっており、学制も同じ6・3・3・4制を採っている。朝鮮学校の高級部(高校に相当)が「高等学校の課程に類する課程を有する」ものであることは、国公私立のほとんどの学校が受験を認めており、進学実績も東大、京大はじめ数多である事実が雄弁に物語っている。
 そもそも民主党は、その「教育政策の集大成」としている「日本国教育基本法案」において「国民と限定するのではなく」、「何人にも『学ぶ権利』を保障」するとしている。
 民主党は、この間、「締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める」(13条)とする国際人権A規約(社会権規約)に則り、「何人にも『学ぶ権利』を保障」するという理念を掲げ、高校無償化法案でもこの理念の下、制度設計をしてきた。除外の論議をすること自体がこの自らが掲げた理念を汚す行為である。
 また、財源確保のため高校無償化制度実施に伴い、来年度からは扶養控除が引き下げられることになっている。
 除外は、ただでさえ一条校と比べ満足な教育助成を受けられないでいる朝鮮学校の生徒・保護者にとって給付無し、控除無しという二重の負担を強いる結果をもたらす。
 朝鮮学校は植民地支配下、奪われた民族性を取り戻すため、戦後(解放後)、雨後の筍の如く設立されたものであり、敗戦を迎えるまで皇国臣民化という同化政策を押し進めてきた日本政府は、被害者への原状回復義務の観点からも民族教育の取組を積極的に支援すべき立場にある。にもかかわらず、恣意的に差別するというのは言語道断である。
  日本政府は判断を先送りしたり、第三者に委ねたりするのではなく、即時、朝鮮学校をその対象とする判断を示すべきである。

首都圏に居住するアイヌ民族 レラの会 会長 長谷川修/女性会議東京都本部 布施由女・清水恵/NPO法人動くゲイとレズビアンの会(アカー) 代表 永田雅司/在日韓国民主統一連合東京本部 梁炳龍/在日韓国民主女性会 徐幸代/在日韓国青年同盟東京本部 朴明哲/在日本朝鮮人東京人権協会 金東鶴/移住労働者と連帯する全国ネットワーク 事務局長 鳥井一平/全国障害者解放運動連絡会議関東ブロック 事務局長 八柳卓司/障害者の生活保障を要求する連絡会議(障害連) 太田修平/障害児を普通学校へ全国連絡会 事務局長 千田好夫/NPO法人自立生活センター・立川 奥山葉月/NPO法人自立生活センター・HANDS世田谷 理事長 横山晃久/全国「精神病」者集団 山本真理/全国ピアサポートネットワーク 世話人 加藤真規子/NPO法人新宿ホームレス支援機構 安江鈴子/NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長 稲葉剛/部落解放同盟東京都連合会 書記長 鈴木信孝/社団法人東京自治研究センター 伊藤久雄/なくそう戸籍と婚外子差別・交流会 菅原和之/ハンセン病首都圏市民の会 森元美代治・須賀力/恵泉女学園大学教授・市民外交センター代表 上村英明/東洋大学ライフデザイン学部/人間環境デザイン学科 教授 内田雄造/専修大学文学部教授 鐘ヶ江晴彦

 

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