若者の不安定就労が社会問題化する中で
就職差別撤廃の取り組みを考える


 第13回就職差別撤廃東京集会が6月8日(金)、豊島公会堂で開催される。

 主催は、同実行委員会(会長 菱山謙二)。

 また、東京都や区市町村行政、私大連など学校関係団体、経済同友会や商工会議所など経済団体など19団体が後援している。

 今年の集会では「若者の不安定就労が社会問題化する今、就職差別撤廃の取り組みを考える」をテーマに人権の立場から雇用の安定と公正採用の確立に向けた今日的課題を参加者に考えてもらうことを目的にしている。

 就職(採用選考)差別の撤廃に向けたこれまでの取り組みの第一が「統一応募用紙」だ。

 採用する企業が就職希望者の適正と能力判断に必要のない個人情報を収集してはならないという考え方に立ち、全国的に統一した「応募用紙」を使用することになっている。

 来年は「統一応募用紙」ができて40年になる。

 しかし、まだ違反事例も多く、徹底していくことが課題になっている。

 第二に、社内で採用時における差別を防止することを含めた人権促進に向けた「責任」担当者を設置するとした「公正採用選考人権啓発推進制度(1977年発足、1997年名称変更)」の発足だ。

 基本的に従業員100人以上の事業所に「推進員」を設置することになっている。

 「100人」未満の事業所への拡大や「推進員」の充実が課題になっている。

 第三に、法的な整備だ。

 1999年「職業安定法」が改定され、「求職者の個人情報の取り扱い」が追加され、その内容を定めた「労働大臣指針」では、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報を求人時に収集してはならないこと、また「統一応募用紙」の使用を明記している。

 しかし、就職差別そのものを禁止する法律はなく、1997年の「改正・男女雇用機会均等法」でも「採用時における女性差別の禁止」は盛り込まれているが罰則規定はない。

 国際的には、国連がよびかけている「グローバル・コンパクト」の10原則の中でも「雇用と就労に関する差別撤廃」が位置づけられており、更に、国際労働機関(ILO)111号条約では「雇用および職業における差別禁止」が明記されているが日本政府は批准していない。

 就職差別を禁止するほうせいびが課題となっている。

 今日の若者の就労状況を見ると、2月の完全失業率は全体で4.5%だが、15歳から24歳までの若者の失業率は9.2%と依然高水準を保っている。

 また、高校生の就職内定率は全国で96.7%、東京都は98.6%。また4年生大学では今年4月の就職率93.6%で前年比2.6%増と改善幅は大きい。

 しかし、就職率とは就職希望者に占める就職の割合で、厚生労働省の推計では今年3月に大学を55万人が卒業し、そのうち38万にしか就職を希望していない。

 つまり、大学卒業生の64.8%しか就職していないということである。

 厚生労働省では、就職希望者以外を「進学」「自営業」「家事手伝い」等としているが、現実はどうなのだろうか。

 他方、2011年の非正規労働者率は35.2%で高水準だ。

 更に、内閣府の調査では、一昨年(2010年)の春、学校を卒業した人などのうち、就職できなかったり、早期に辞めたりした人が大学や専門学校では2人に1人、高校では3人に2人の割合に上っていることが明らかになっている。

 若者の雇用がより深刻な状況に陥っていることが分かる。

 最近では、就職希望者がホームページ上から登録する「エントリーシート」が増加しており、そこには本籍地や家族状況なども記入させる会社もあり、これまで長年の多くの関係者が積み上げてきた就職差別撤廃に向けた取り組みの成果を土台から崩すような動きも出てきている。

 「統一応募用紙」の徹底化、「推進員制度」の充実化、「法的整備」などの就職差別の撤廃に向けたこれまでの取り組みをより強化するとともに、昨今の「若者の不安定就労」を「雇用や就労からの排除」として位置づけ、排除のないシステムの確立ということも今日的な課題になっている