六月五日、池袋の豊島公会堂で、第十回「就職差別撤廃」東京集会がひらかれる。主催は同集会実行委員会。今年のテーマは、「公正採用選考を実現するために、現状と課題を考える」である。
この集会は、一九九八年六月に「差別身元調査事件」が発覚したことをきっかけに始まったものだ。その目的は「就職差別を撤廃し、求職者の人権を守ること、同時に安定就労環境を守るために広く都民にうったえること」である。実行委員会には、東京人権企業連、都同教、連合東京、解放同盟都連、東京解放研、東京同宗連が参加している。今回は記念すべき第十回集会である。
この十年間の取り組みの中で、大きな成果があった分野と、あらたな課題がうかびあがってきた分野がある。
まず成果としては、都内の行政や企業に対して就職差別撤廃の取り組みが一定広がってきたことである。たとえば、東京都はこの六月を「就職差別解消促進月間」と定め、都内企業への啓発を強化するようになった。「全国高等学校統一応募用紙」は、東京のはたらきかけなどもあって、家族欄を削除するなど、より応募生徒の人権に配慮したものになった。「公正採用選考人権啓発推進員」については、従業員百人以上の事業所に限ってだが、都内企業の九十%以上で設置されるようになった。
一方、新たな課題は、雇用形態の多様化にともなう制度や取り組みの形骸化、空洞化が心配される事態となってきたことである。たとえば大学生の就職活動では、すでにネットを通じての応募・選考が一般化しており、求職学生と企業の間に入る民間職業紹介事業者が「エントリーシート」(とよばれる一種の社用紙)を使うことがあたりまえとなっている。さらに若年労働者の雇用形態そのものが派遣など不安定化したことで、求職・採用活動において一定のルールにもとづく選考が保障されなくなってきている。「就職差別撤廃」東京集会はこの間、このような状況に警笛を鳴らしてきた。
今回は十回目の節目であるが、こうしたこれまでの取り組みの経緯や成果を確認し、改めて新たに生じている課題を整理する。当日は、実行委員長の竹村毅さんから記念講演を受けるほか、労働行政と高校教育の現場から、それぞれ報告をしていただく。
さきに述べた就職差別をめぐる新たな課題が生じている背景には、「労働市場の自由化」やグローバル化の流れがある。こうした流れは、最近の世界不況の要因の一つとして強く批判されるようになっている。競争や市場原理を絶対視しルールをただ破壊したら、世界は弱肉強食の荒野に戻ってしまう。この事実をふまえながら、どうすれば求職者の人権と安定就労環境を守ることができるか、もう一度考えていくべき時だ。都連同盟員は「就職差別撤廃」東京集会に積極的に参加し、取り組みを成功させよう。