アメリカ・イギリス両国によるアフガニスタンへの攻撃が日々激しさをましている。10月第3週に入ってからは、空爆だけではなく、特殊部隊まで投入し、戦闘を拡大している。報道によれば、激しい攻撃によって、一般のアフガニスタン民衆にも被害が広がっているとのことだ。また、パキスタンをはじめとする周辺のイスラム諸国では、反米抗議行動が活発化し政治的緊張も高まっている。
アメリカ政府の主張によれば、今回の戦争は、ニューヨーク・ワシントンでの同時多発テロに対する「報復」として、国際テロ組織を撲滅するためにおこなわれている。しかし、だとすれば、一般のアフガニスタン民衆に被害が出たり、イスラム教徒の反発を招いたりするのは「おかしなこと」ではないか。「アメリカ人に(テロによる)犠牲者が出ることは許せないが、アフガニスタン人や、反米デモをしているイスラム教徒に(戦争や弾圧で)犠牲者が出るのは、いたしかない」とは誰も言えないはずだ。
また、アメリカ政府は、いまだにウサマ・ビンラディンとその組織「アルカイダ」が、同時多発テロの首謀者であり実行組織であったことの明確な証拠を全世界に公開していない。なぜ公開しないのだろうか? これでは「アメリカ政府は、実は証拠など持っていないのではないか」との疑念さえ抱かざるをえないではないか。
一方でパレスティナでは、アメリカやイギリスの支持を受けたイスラエル政府が、パレスティナ民衆に対する大量殺戮をくり返している。イスラエル観光相暗殺への「報復」と称して、すでに数10人のパレスティナ人がイスラエル政府によって暗殺され、さらにイスラエル軍がゲリラ掃討作戦を展開しようとしている。このままほっておけば、パレスティナ民衆に多くの犠牲が出ることが避けられない。元はと言えば、イスラエルが国際公約だった占領地からの撤退を反故にし、一方的に和平を踏みにじったのに、そのイスラエルの責任は「不問」に付しておいて、パレスティナとイスラムの「テロ」だけを非難する。これが正当な行為なのだろうか。
「イスラム原理主義過激派」と言うが、そもそもは、このパレスティナの現状に対する怒りがその根底にあることを、西欧や日本などは忘れているのではないか。ニューヨークやワシントンでは、確かに多くの無関係の市民が犠牲になった。これは非難されるべきだ。だが全く同様に、アフガニスタンの無関係の市民、パレスティナ民衆の理不尽な犠牲も非難されなくてはならない。
日本政府は、こうした問題を一切不問にして、ひたすら戦争協力につき進んでいる。これでよいのだろうか。問題の表層だけをとらえて戦争をしかけるのでは、決して本当の解決などできない。後方支援は国際法上立派な戦争行為である。私たちはこのような戦争には反対である。
《解放新聞東京版535号・主張より》