1999年12月27日
東京都教育委員会
教育長 中島元彦 様
部落解放同盟東京都連合会
執行委員長 石居秀夫
「日の丸・君が代」に関する要請書
「日の丸・君が代」を「国旗・国歌」とすることについては、「国旗・国歌法」が成立した現在でも少なからぬ異論が存在していることはご存じのことと思います。しかもこの異論は私たち従来から反対をとなえてきた者だけではなく、今、国内外の多くの人々が抱いており、そのことは世論調査などの結果からも明らかになってきています。このため今回の法律でも、国旗・国歌の「尊重義務」については盛り込まれないことになりました。
ところが、「尊重義務」の法制化がわざわざ見送られたにもかかわらず、実際には学校現場を中心に法律の成立を契機として「日の丸・君が代」を国旗・国歌として尊重し斉唱・掲揚する指導が強められようとしています。しかも、新聞などの報道を見れば、これらの指導は「業務命令」など、客観的に見ればどう見ても強制としかいえないような手法をとって進められようとしているようです。
私たちは、このような事態を深く憂慮しています。私たちは、これまでも「学習指導要領」を根拠として「日の丸・君が代」の学校現場へのおしつけがおこなわれていることに強く反対してきました。同じ立場から、今回の法律制定を根拠として「日の丸・君が代」がより強く学校現場におしつけられることを許すことができません。
東京都教育委員会もご承知のように、現在都内の学校には被差別部落の子どもたちや外国籍の子どもたちが多数学んでいます。
被差別部落の子どもたちにとっては、「君が代」を自分たちの国歌として尊敬をもって斉唱することは、同時に自分たちを差別する身分制度である天皇制を永遠に続くよう求めることにつながります。また、「日の丸」を国旗として尊重する行為も、過去の歴史に学べば明らかなように、結果として差別や排外主義を強めることにつながります。長い身分差別の歴史の中で、自分たちの歴史や個性を否定されてきた部落の子どもたちにこのような行為を強いることは決してあってはなりません。
また、都内の学校に学ぶ多くの外国籍の子どもたちにとっても、その多くが日本の侵略や植民地支配を受けたアジアの子どもたちであることもあわせて考える時、「日の丸・君が代」を尊重するようおしつけることはあってはならないことです。 今回の法制化を受けて、学校現場では「日の丸・君が代」の掲揚・斉唱の指導を教職員に「職務命令」で指示する校長が出てくるのではないかと憂慮されます。しかし、以上述べてきた経過からもお分かりのように、この問題は高度に思想信条の自由に関わる重大な問題であって、「職務命令」の趣旨にそぐわないといわなくてはなりません。「日の丸・君が代」の掲揚・斉唱に関連して「職務命令」を出すこと自体、職権の乱用であって、決しておこなわれるべきではないと考えます。
以上の点を東京都教育委員会が十分にご理解いただき、子どもたちにも保護者にも、また教職員にもいかなる強制もおこなわないよう以下について強く要請します。
記
1)児童・生徒、保護者に対して「日の丸・君が代」の掲揚・斉唱に関していかなる強制もおこなわないこと。
2)教職員に対しても強制もおこなわないこと。
※なお、同文の要請書を東京都公立学校教職員組合、東京都高等学校教職員組合も提出していることを付記します。
以上
|