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(死体及びこれと前後して発見された証拠物によって推認される犯行の態様について。)
その一六 玉石・棒切れ・ビニール片・○△青果の荷札・残土・財布・三つ折財布・筆入れについて。
(5)財布について。
所論は、被害者が当時チャック付の財布を持っていたことは、N・E(五・二員調書)や証人N・Tの原審(第七回)供述等家族の供述によって疑いがない。しかし、この財布は発見されていない、犯人は被害者から腕時計や万年筆など金目のものを奪い取っているので財布も奪い取ったとみるのが自然である、ところが、被告人の身辺からこの財布は現れず、自白によってもチャック付財布は知らないというのである、もし被告人が犯人だとすれば、この財布に気付かないはずはないし、気付かなかったとしてもどこかから発見されるはずである、この点でも被告人を犯人とするのは明らかに客観的事実に合致しないというべきであるというのである。
N・E及びN・Tの各供述のほか、原審で取り調べた被害者の友人S・To及びA・Yoの各七・一検調書によれば、被害者は当日七〇〇円ないし八〇〇円在中の紺がかった水色のビニール制チャック付財布を所持していたものと推認できる。
ところで、被告人は六・二七検原調書中で「私は、Yちゃんの物でチャックのついたがま口は知りません。」といい、七・一検原調書(第二回)中で「私は女学生の制服の上着の左右のポケットと胸のポケットを探しましたが、チャック付の財布というものはありませんし、盗んでおりません。私が盗った財布というのは前に言ったとおり(身分証明書入り三つ折財布)です。」と述べていること、及び捜査の結実によってもチャック付財布が発見されていないことは、所論指摘のとおりである。
しかしながら、被告人は、被害者の死体の首に巻き付けられていた木綿細引紐について否認しているのを始めとして、多くの点において必ずしも真相を告白していないことを考え合わせると、被害者からチャック付財布を奪取しながら情状面において不利になることを恐れて、財布が発見されていないこと、又は発見されるはずのないことをよいことに、この事実を否定しているのではないかとも考えられる。いずれにしても、この財布が発見されていないし、在中の金員についての使途関係も不明であるから、被告人が財布を奪取したことを確認することは困難である。なお、原判決も材布を奪取した事実は認定していないし、もともとこの点は起訴されてもいない。
要するに、被告人が財布を奪取したことが確認できないからといって、被告人が犯人でないということはできない。
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