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(死体及びこれと前後して発見された証拠物によって推認される犯行の態様について。)

その一六 玉石・棒切れ・ビニール片・○△青果の荷札・残土・財布・三つ折財布・筆入れについて。

(7)筆入れについて。

 所論は、被害者の未発見所持品のうちに筆入れが、ある、被告人は、自白中で教科書類を埋める際に鞄を逆さにしたとき筆入れが落ちたので、その蓋をあけてみると中に万年筆が入っていたので、また蓋をしてジーパンの腰のポケットに人れて自宅へ持ち帰り、万年筆を取り出して筆人れを風呂場で燃してしまったといっている、しかし、価値のない、しかもポケットに入れて持ち歩くとガタガタ音がするような筆人れを、脅迫状をN家へ届けにいった往復の長い道程をわぎわぎ持ち歩いたという供述は極めて不自然である。筆入れに関する自白内容は不合理、不自然であって信用できないというのである。
 いかにも、筆入れに関する被告人の自白内容には不自然なところがある。ところで、先にみたように、万年筆は被告人が「四本杉」で脅迫状のあて名などを訂正するため、被害者の鞄の中を探って筆入れの中から取り出して使用したと認めざるを得ないのであるから、教科書を捨てる際に万年筆在中の筆入れを奪取したという供述は、奪取の時期と場所に関して意識的に虚偽を述べたと認めざるを得ない。そして、万年筆在中の筆入れをズボンの後ろポケットに入れたままN家へ脅迫状を届けに行ったという供述部分も、こと筆入れに関しては疑いがないわけではないけれども、被害者の鞄の中に筆入れが入っていたところそれがなくなっていること、及び被告人が筆入れを自宅へ持ち帰って風呂場で燃したと供述していること、並びに万年筆が後に勝手場出人口の鴨居から被告人の自供に基づいて発見されたことをかれこれ総合すると、万年筆など在中の筆入れ一個を強取したのは、「四本杉」においてであると認めるのが相当である。
 しかるに原判決は、判示第一の事実中で「同女が自転車につけていた鞄の中にあった同女所有の万年筆一本など在中の筆入れ一個を強取した」旨認定判示し、その「鞄類の発見経過について」の項で「教科書類を埋没する機会に取り出した筆入れの中にあった万年筆一本……」と説示しているところからみると、万年筆在中の筆入れを強取したのは教科書類を埋没した際で、その場所であると認定したものと解せぎるを得ないのであるから、原判決は、万年筆在中の筆入れを強取した時期と場所については事実を誤認したといわなければならない。しかし、被告人は既に被害者の腕時計や身分証明書そう入の手帳を強取して強盗の身分を取得していたのであるから、右認定の誤りは、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認に当たらない。

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