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(死体及びこれと前後して発見された証拠物によって推認される犯行の態様について。)

その一六 玉石・棒切れ・ビニール片・○△青果の荷札・残土・財布・三つ折財布・筆入れについて。

(2)棒切れについて。

 所論は、芋穴の中からビニール風呂敷とともに棍棒が発見されているが、この棍棒は犯行に関連があるものと思われるのに、被告人は自白中でこの棍棒について何も語らない、もし、被告人が犯人であれば、前述の玉石と同様に、この棍棒の出所や使途などについて説明できるはずである、ところで被告人は当審(第二七・二八回)で、取調官に棍棒の実物を見せられて「死体を二人がかりでこの棒で担いできたのではないか。」ときかれたが、知らないと答えたと述べており、これによれば、取調官は棍棒が事件に関係がないと判断して強いて調書に記載しなかったのではなかろうか、犯行現場に客観的に実在したことの明白な物証であっても、捜査官の関心をひかず、又は見落としたことや想定することができないことは、被告人の自白には一切登場しないのである、このことは自白が捜査官の描く構想どおりに不当に誘導されたものであることを示している、更に、当審で取り調べた和歌森太郎及び上田正昭共同作成の鑑定書によれば、この棍棒は、周辺地区に伝承されている墓制からみて、埋め墓を守る目的で使用されるいわゆるハジキの習俗の変形ではないかと考えられ、犯人はこの墓制上の習俗を熟知していたことが推認でき、この習俗を知らない被告人は犯人ではなく、本件は被害者と面識のある複数犯人による謀殺事件の疑いがあるというのである。
 まず、当審で取り調べた棍棒(昭和四一年押第二〇号の5)をみると、棍棒といえるような太さや長さはないし、その両端は、所論がいうような刃物で切ったような切じではなく、手で折ったような断面を呈し、折った際に裂けたような痕跡もあり、材質はもろくて折れやすく無花果ではないかと思われる。外観からみても、この棒切れが、和歌森・上田鑑定にいう「ハジキ」の代用にしたのではないかなどと考えること自体無理だといわぎるを得ない。
 ところで、証人高橋乙彦は原審(第四回)において、山狩りに携わった消防団員や機動隊員らが、遺留品や証拠物を捜索するために薮などを払いのけたり、杖代わりに山の木を折って持ち歩いたと証言しており、また、証人長谷部梅吉は当審(第九回)において、「捜索隊の者が山を歩くのに杖代わりに持って歩き、そこへ投げ捨てたのではないかと思った、その棒が死体を運ぶだけの重量に堪えるものでないという記憶があるので、おそらく捜査員もその棒で運んだということは頭になかったのではないかと思います。」と供述しており、これによれば、死体先見前に山狩りの捜索隊員がこの棒を芋穴の中へ捨てたのではないかとも考えられる。
 また、本件以前に、本件と何の関係もない何人かが右の棒切れを芋穴へ投げ込んだという推測も十分可能である。
 そうだとすれば、犯人がこれを何らかの目的で使用し、ビニール風呂敷とともに芋穴の中に投げ捨てたとは、にわかに断定できず、したがって、被告人が犯人ではないからこの棒の出所や使用状況について説明ができなかったとみるのは相当でない。

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