部落解放同盟東京都連合会

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第一一 死体埋没に用いられたスコップについて

 確定判決は、本件の死体埋没現場から約一二五メートルのところにある麦畑で発見されたスコップ(浦和地裁前同押号の四一、本件スコップ)が、本件事件当夜I養豚場からスコップを盗み出して死体の埋没に使用した旨の請求人の自白を補強する物的情況証拠であると説示するが、所論は、新証拠として、(1)生越忠作成の昭和五〇年八月二五日付鑑定書(生越鑑定書)、(2)生越忠作成の昭和五二年四月一八日付鑑定補充書(生越鑑定補充書)、(3)証人生越忠を援用して、本件スコップに付着していた土壌の質が、死体埋没場所付近の土壌のそれと異なることが明らかにされ、また、仮に本件スコップが同夜I養豚場から盗み出されたものであるとしても、(4)T・Kの昭和三八年六月二〇日付検察官に対する供述調書(T検面)により、本件犯行当夜にI養豚場の飼い犬が吠えたことが確認されたから、これを盗み出したのは、右飼い犬が怪しんで吠えるような、日頃同養豚場に出入りしていない者であり、右養豚場によく出入りしていた請求人ではないことが明らかにされたので、本件スコップを請求人と本件死体遺棄、延いては殺人等の犯行とを結びつける証拠の一つとして、有罪を認定した確定判決には、合理的な疑問が生じたというのである。
 しかしながら、右(1)、(2)及び(4)は、いずれも所論と同旨の主張を裏付ける新証拠として、既に第一次再審請求で提出され、その請求棄却決定の理由中で判断を経た(なお、(1)、(2)については、再審請求棄却決定に対する異議棄却決定、特別抗告棄却決定の各理由中でも判断されている。)ことが明らかであり、鑑定書の作成者生越忠を証人として新たに加えてみても、実質上、証拠は同一であるに等しいから、所論は、本件スコップに関して、第一次再審請求におけると同一の理由により再審を請求するものというほかなく、刑訴法四四七条二項に照らし不適法である。
 なお、念のため、所論援用の証拠につき検討を加えておく。生越鑑定書と生越鑑定補充書は、第一審が取調べた昭和三八年七月二〇日付星野正彦作成の鑑定書(星野鑑定書)の土質比較検査の方法とその結論を批判するのであるが、星野鑑定書の検査が採取資料間の土質比較のために必ずしも十分なものでなかったことは、既に第一次再審請求の特別抗告乗却決定が指摘するとおりである。しかし、星野鑑定書により、本件スコップ付着の土壌の一部が、死体の埋没穴付近から採取された土壌サンプルの一つと類似することが明らかにされたのであり、この事実については、所論援用の生越作成の鑑定書無二通も否定するものではなく、右スコップが畑地内に放置されていた状況など、確定判決審のその余の関係証拠から認められる具体的事情を併せ勘案すると、本件スコップが本件埋没穴の掘削に用いられた蓋然性は高いということができ、その意味で本件犯行の物的証拠の一つと認められる。この点に関する確定判決の事実認定は、相当として是認できる。また、T検面にあるとおりに、本件当夜、I養豚場の飼い犬が吠えた事実があったとしても、その事実と本件スコップの持ち出しとの関連性は、はっきりしないというべきである。したがって、確定判決審の関係証拠上、本件スコップが右養豚場のものである蓋然性が高いところ、請求人は、以前、右養豚場に出入りしていたことがあり、スコップの在り場所も知っていたはずであるから、同所からスコップを持ち出しやすい立場にあったと認められるのであり、所論援用の証拠を確定判決審の関係証拠と併せ検討して見ても、本件スコップに関する確定判決の事実認定に合理的な疑いを差し挟むものとはいえない。

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