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 二 本件万年筆と被害者の万年筆との同一性

 被害者Yが所持、携帯していた万年筆であるとして押収されている本件万年筆にはブルーブラックのインクが在中しているところ、所論は、新証拠として、(1)科学警察研究所警察庁技官荏原秀介作成の昭和三八年八月一六日付、同月三〇日付各鑑定書、(2)右同技官粕谷一弥作成の同年九月九日付鑑定書、(3)被害者の当用日記、受験生合格手帳、ぺん習字浄書、学級日誌、(4)K・Kの司法警察員に対する同年一〇月三日付供述調書、(5)N・Tの検察官(同年五月二九日付)及び司法警察員(同年七月二七日付)に対する各供述調書(N検面、N員面)、(6)弁護人横田雄一作成の昭和六一年七月一九日付調査報告書(横田報告書)、(7)S・Sの司法警察員に対する昭和三八年五月七日付供述調書(S員面)等を援用して、これらの証拠により、被害者が自分の万年筆で記載した当用日記、受験生合格手帳、学級日誌、昭和三八年五月一日午前のペン習字浄書等はすべてライトブルーのインクで記載されており、しかも、被害者が本件発生前に郵便局に備付のインク瓶からブルーブラックのインクを自分の万年筆に補充してはいないことが裏付けられ、これらの事実から、被害者の万年筆にはライトブルーのインクが入っていたはずであり、ブルーブラックのインク在中の本件万年筆は、本件当時被害者が所持、携帯していた万年筆ではないことが明らかになったから、仮に本件万年筆が、捜査官の作為なしに、第三回捜索の際に請求人方から発見押収された事実があるとしても、これをもって請求人が本件の犯人と断定する根拠とすることはできない、というのである。なお、右(1)ないし(5)は、第一次再審請求手続でも提出され、判断を経ている。
 検討するに、被害者がライトブルーのインクを常用しており、当日午前のペン習字の授業でも同種のインクを用いているが、本件万年筆に入っていたインクは、ブルーブラックであって、被害者の常用していたインクと異なることは、所論指摘のとおりである。しかし、この事実から直ちに、本件万年筆が被害者の万年筆ではない疑いがあるということはできないのであって、請求人提出の横田報告書、S員面等の証拠資料を検討しても、右当日午前のペン習字の後に、本件万年筆にブルーブラックのインクが補充された可能性がないわけではない。被害者の兄N・K、姉N・T、学友Y・Tの第一審における各証言、N方に保管されていた万年筆の保証書(浦和地裁前同押号の六二)により、本件万年筆は被害者の持ち物で当時被害者が携帯して使用していた万年筆であると認められる。就中、K(被害者の兄)の右証言によれば、本件万年筆は、昭和三七年二月に、同人が西武デパートで買って被害者に与えたパイロット製の金色のキャップ、ピンク系の色物のペン軸、金ペンの万年筆で、その後も、自宅で書きもの仕事をするとき、被害者から借りて使っていたことがあり、外観、インク充填の様式、捜査官から被害者の持ち物か確認を求められて試用した際のペン先の硬さ具合などから、被害者の万年筆に間違いないというのであって、本件万年筆に被害者が平常使用しないブルーブラックのインクが入っていた事実を踏まえて慎重に検討しても、Kの右証言の信用性は左右されない。このような次第で、所論援用の新証拠を確定判決審の関係証拠と総合して検討しても、本件万年筆が被害者の持ち物である旨の確定判決の認定を揺るがすまでには至らないといわなければならない。

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