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第三 姦淫の態様について

 所論は、新証拠として、(1)前記上田第二鑑定書、(2)前記木村意見書、(3)謝国権作成の昭和五四年五月二五日付意見書(謝意見書)、(4)証人上田政雄、(5)同木村康、(6)同青木利彦、(7)同謝国権等を援用して、被害者の死体には暴力的に姦淫されたことを示す証跡がなく、請求人の自白する態様で強いて姦淫することは不可能なことが裏付けられるから、強姦した旨の自白は、内容虚偽であることが明らかになったと主張する(平成二年五月二二日付「新証拠とその立証趣旨」と題する書面及び同年一二月二〇日付事実取調請求書)。そのうち、右(2)、(3)は、第一次再審請求でも提出され、判断を経たものである。
 上田第二鑑定書は、確定判決審で取調べた同人作成の昭和四七年七月二〇日付鑑定書(誤植訂正申立書を含む。上田第一鑑定書)とともに五十嵐鑑定を批判し、五十嵐鑑定書記載の所見により、姦淫行為があったとは認められるが、同鑑定書の外陰部所見にいう創傷は、いずれも、生前に行われた姦淫の態様が暴力的であったことを示すとまでは言い難く、また、請求人の自供のとおりの態様で被害者を姦淫することは、実際上不可能であろうとするもの、木村意見書は、本件死体の外陰部の損傷は、暴力的姦淫の際に通常形成される損傷と部位、形状を異にし、爪、手指等によるというよりも、粗面の物体との接触、擦過により形成されたと見られること、被害者のズロース裏面の外陰部に接する部分に精液痕と見られる班痕があることにより、被害者が性交後身繕いしたことが裏付けられること等の諸点に照らして、本件の性交は強姦ではないとするもの、謝意見書事も、請求人の自供のような態様で暴力的な姦淫を行おうとすれば、被害者の激しい抵抗にあって、性交は不可能であるなどとするものである。
 しかしながら、確定判決審の関係証拠によれば、本件姦淫の際、被害者は、両手を手拭いで後ろ手に縛られており、両足を動かす程度しか抵抗できない状態にあったと認められるのである。このような本件の具体的な状況を考慮すると、本件の姦淫が被害者の抵抗を抑圧して、強いて行われたことは、明らかである。謝意見書は、激しい抵抗にあえば、請求人の自白した体位、方法では、性科学的に見て性交は不可能であるというのであるが、前記の通り、被害者に激しい抵抗ができたはずはなく、また、謝意見書が援用する自白が、的確に、細大漏らさず姦淫の際の体位等の状況を表白しているかについても大いに疑問であり、その前提において既に容れ難いというほかはない。
 このような次第で、右に検討した証拠を含め、所論援用の全ての証拠を併せて、確定判決審の証拠と総合考察しても、被害者を強姦した旨の請求人の自白が内容虚偽であるとする所論を裏付け、確定判決を動揺させるものということはできない。

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