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第二一 供述調書添付図面の筆圧痕について

 所論は、新証拠として、(1)荻野晃也作成の昭和五〇年一二月二〇日付鑑定書(荻野鑑定書)、(2)弁護人大野町子ほか作成の昭和五三年五月二三日付報告書(大野ほか報告書)、(3)検証(確定記録に編綴の請求人の司法警察員に対する供述調書類添付の図面を対象とする。)、(4)証人荻野晃也等を援用して、請求人の捜査官に対する自供調書に添付の図面の中には、捜査官が予め用紙に印象しておいた筆庄痕を請求人に筆記具でなぞらせる方法で作成されたものもあることが裏付けられ、請求人の自白の任意性や信用性に重大な疑問があり、ひいては請求人の有罪を認定した確定判決の事実認定にも疑問の生じることが明らかになった旨主張する。
 しかしながら、右(1)、(2)は、所論と同旨の主張を裏付ける新証拠として、既に第一次再審請求で提出され、その請求棄却決定、請求棄却決定に対する異議棄却決定の各理由中で判断を経た(なお、(1)については、特別抗告棄却決定の理由中でも判断されている。)ことが明らかであり、本件再審請求の審理にあたり、これらに所論指摘の自白調書添付図面の検証と右鑑定書の作成者である証人荻野晃也を加えてみても、実質上、所論が依拠する証拠は第一次再審」請求の場合と同一であるに等しいから、所論は、畢竟、本件自白調書添付図面の鉛筆線と筆圧痕の関係につき、第一次再審請求におけると同一の理由により再審を請求するものであって、刑訴法四四七条二項に照らし不適法である。
 なお、所論にかんがみ、念のため検討するに、荻野鑑定書は、確定判決の依拠する宮内義之介作成の昭和四五年七月二三日付鑑定書及び上野正吉作成の昭和四六年六月三〇日付鑑定書につき、事前のモデル実験と本実験との間に飛躍があり、判定対象も恣意的に選択されているなど、有効、妥当な鑑定とは言い難く、右宮内、上野両鑑定書が鑑定対象としなかった筆圧痕をも含めて、いわゆる中抜け現象の有無の判定を行い、走査型電子顕微鏡を用いれば、筆圧痕と鉛筆線との先後関係が正確に判定され得るはずであるなどと述べるもので、第一次再審請求に対する各審級の棄却決定がつとに説示するとおり、筆圧痕と鉛筆線との先後関係を判定するについての一つの方法論を提示するにとどまるものであり、大野ほか報告書は、報告者が請求人の捜査官に対する供述調書添付の各図面を逐一肉眼で見分した結果、確定判決審で行われた検証の際に確認された以外にも筆圧痕が存在することを報告するものであるが、所論援用の各証拠を、確定判決の依拠する関係証拠と総合考察しても、確定判決の事実認定に合理的な疑問を生じさせるまでの具体的内容を持つものとはいえない。

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