部落解放同盟東京都連合会
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《狭山事件情報020326》

      

 発信日02年3月26日、通算第10号

         

「大崎事件」(鹿児島)に再審開始決定。石山鑑定は信用できず。「白鳥・財田川決定」を適用して再審開始へ

 鹿児島地方裁判所は26日、「大崎事件」で懲役10年の有罪判決を受け服役を終えていた原口アヤ子さん(74)ら2人の再審請求を認め、再審を開始する決定を下しました。この事件では「殺害の事実があったかなかったか」自体が争点となり、検察側は、帝京大学の石山イク夫・名誉教授の鑑定書を有罪の有力な証拠として提出していました。しかし鹿児島地方裁判所は、この石山鑑定を信用できないとし、弁護側が提出した九州大医学部の池田典昭・教授の鑑定書などに信用性を認め、再審開始決定を出しました。
 石山名誉教授は狭山事件において、異議申し立て棄却決定が重要なよりどころとした、検察側の「石山鑑定」を提出しており、その非科学的で強引な論証方法に批判が集まっていました。


以下報道


《asahi.com.02.3/26》

 殺人罪で服役した原口さん再審決定 鹿児島・大崎事件

 鹿児島県大崎町で79年、農業中村邦夫さん(当時42)が殺害されたとされる「大崎事件」で、捜査段階から否認を続けながら殺人と死体遺棄の罪に問われ、懲役10年の刑が確定、服役を終えた農業原口アヤ子さん(74)=鹿児島県大崎町永吉=ら2人の再審請求に対し、鹿児島地裁(笹野明義裁判長)は26日、再審開始の決定を出した。再審請求審で新たに提出された医師の鑑定結果が殺害状況と矛盾し、共犯者らの自白の信用性にも疑問があると判断した。
 再審を請求していたのは、原口さんのほか、死体遺棄罪で懲役1年の刑を受けた服役後、無実を訴えたおいの善則さん(故人)の母親のチリさん(73)=同県志布志町志布志。
 確定判決は、「頸椎(けいつい)前面に出血があることから首に外力が働いた。他殺による窒息死と想像する」とする城哲男鹿児島大医学部教授(当時)の鑑定書と、共犯者とされた原口さんの夫ら3人の殺害・死体遺棄を実行したとする自白を根拠にしていた。
 再審請求審で弁護側は、池田典昭・九州大医学部教授の鑑定書などを提出。首を絞めたとする確定判決の殺害方法を裏づける痕跡はなく、死因として考えられるのは頸椎の損傷だけで、事件当日に自転車ごと溝に転落して、頸椎を損傷した事故死の可能性があると主張した。
 自白の信用性については、共犯者とされた3人はいずれも知的障害があり、捜査当局に迎合的なうその自白をしたと主張し、善則さんらの無実を訴える証言などを新証拠として提出していた。(15:54)

《asahi.com.02.3/22》

 殺害の有無と自白の信用性焦点 大崎事件

 大崎町で23年前、農業中村邦夫さん(当時42)が殺されたとされる「大崎事件」で、懲役10年の刑に服した原口アヤ子さん(74)=大崎町永吉=ら2人が無実を訴えている再審請求審で、鹿児島地裁が26日、再審を認めるかどうかを決定する。弁護側は新証拠として「殺害行為はなかった」とする鑑定書などを提出。共犯者とされた男性らの自白の信用性と合わせ、裁判所がこれらをどう判断するかが焦点だ。
 再審を請求しているのは原口さんと、おいである中村善則さん(故人)の母親チリさん(73)=志布志町志布志。
 原口さんは殺人と死体遺棄の罪に問われて鹿児島地裁で懲役10年の判決を受け、81年1月に最高裁で刑が確定。善則さんは80年3月に死体遺棄罪で同地裁で懲役1年の判決を受け、控訴せずに確定した。
 確定判決によると、原口さんは79年10月12日夜、夫ら2人と共謀し、泥酔して自宅で寝ていた義弟の邦夫さんの首をタオルで絞めて窒息死させ、善則さんを含む4人で、遺体を邦夫さん方の牛小屋に捨てたとされる。殺害の動機については、原口さんが日ごろから悪感情を抱いていた邦夫さんが事件当夜、泥酔していたのを見て憎しみが募った、とした。
 原口さんを除く善則さんら3人は捜査段階で容疑を認め、1審でも罪を認めた。一方、原口さんだけは一貫して否認を続けた。
 原口さんは服役後の95年4月、善則さんも97年9月に鹿児島地裁に再審を請求。善則さんは昨年5月に死亡し、チリさんが遺志を継いだ。

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 再審請求審で原口さんの弁護側は「殺害行為はなかった」と主張。城哲男・鹿児島大名誉教授の鑑定補充書を新証拠として提出した。
 城名誉教授は捜査段階で、邦夫さんの死を他殺とする鑑定書をまとめ、これが有罪判決を支える有力な証拠になった。だが鑑定書作成後、邦夫さんが事件当日、自転車に乗っていて深さ約1メートルの溝に転落していたことを知ったとして、「(この事故で)頸椎(けいつい)が損傷して、窒息に至った事故死の可能性もある」と見解を改めた。
 弁護側はさらに、池田典昭・九州大医学部教授の鑑定書も提出。池田教授は「首が絞められた痕跡はなく、唯一考えられる死因は頸髄損傷であることから、転落による事故死の可能性がある」と結論づけた。
 これに対し、検察側は「うっ血してできる変色帯が首に認められることから、幅広の索状物で絞めた可能性が濃厚だ」とする石山・帝京大名誉教授の意見書を提出して反論。池田鑑定については、刑事訴訟法が新証拠の要件と定める「新規性」を満たしていないとも主張している。
 一方、自白の信用性について、弁護側は「共犯者とされた3人はいずれも知的な障害があることから、捜査当局に迎合的な、うその自白をした」と主張。3人のうち2人が服役後、原口さんの犯行への関与を否定した証言なども新証拠として出した。
 これに対し、検察側は「自白は具体的で整合性があり、信用性に疑いはない」と反論している。

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 「疑わしきは被告人の利益に」として再審の門を広げた最高裁の「白鳥決定」(75年)は、新証拠が確定判決の事実認定に合理的な疑いを生じさせるだけで、再審を開始できるとした。その後数年間は、免田事件や財田川事件など、死刑判決が確定していた重大事件も含めて再審開始の決定が相次いだ。
 ただ白鳥決定を巡っては、確定判決の証拠をすべて洗い直すことまで許されるのかという点で、法的安定を重視する検察側と、人権重視の弁護側が対立。ここ十数年は再審請求を棄却する決定が多くなっている。

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