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(二)、山下意見書の新規明白性と原決定の誤りについて

 原決定は、山下富美代意見書について、「筆跡の特徴点を捉えるについて判定者の主観が入ることは避けがたいであろうから、これが、異同比率の算出にも影響する」として、「右意見書の価値は、限定されたものといわざるを得ないのであって、三鑑定の判断を揺るがすには至らない」と述べているが、原決定が「筆跡の特徴点を捉えるについて判定者の主観が入ることは避けがたい」として鑑定の価値を限定されたものとするならば、まさに「筆跡の特徴点についての判定者の主観」のみにもとづいた三鑑定の証拠価値こそ限定されたものと言うべきである。
 山下意見書は、警視庁科学捜査研究所で文書鑑定実務に従事していた経験を持つ本鑑定人が、従来の筆跡鑑定方法の問題点をふまえて、本件における筆跡鑑定の対照条件を検討した上で、異同比率を用いて脅迫状と上申書を資料として鑑別するとともに、あわせて、漢字の出現率、誤用・当て字と誤字、漢字の熟知性、筆勢・筆速などの諸点における相異をも検討し、「同一筆跡と断定することは不可能である」と結論しているのであって、原決定は山下意見書の評価を誤ったものである。
 また、原決定は 「異同比率算出の基礎にし得たのは、『月』『日』『時』『五』の四個に過ぎず、量的に問題がある」とするが、山下意見書は、鑑定資料の適格性について厳密に検討した上で、脅迫状と上申書に共通する漢字四字(および『ツ』)を用いて異同比率を算出しているのであって、鑑定の結論の妥当性を何ら左右するものではない。
 山下意見書が述べるように、「形態上の相違の有無と程度を経験的帰納法によって行っていた」従来の筆跡鑑定方法に対して、異同比率にもとづく鑑定方法は、「筆跡において恒常性のあるのは、文字の絶対的大きさではなく、字画相互の大きさの比率、すなわち相関数値であることが、実験的にも証明されており、このような客観的手法を筆跡鑑定に取り入れ」たものであり、「字画構成、字画形態、筆順特徴を中心においた特徴の対照方法をとっているため」に共通同一漢字を資料としているのであって、むしろ、山下意見書の科学的客観性を示すとともに、山下意見書が指摘する資料の妥当性、筆跡の恒常性および時系列的変化を無視した三鑑定の証拠価値こそ大きく揺らいでいることは明らかである。
 原決定は、山下意見書の指摘する諸点にもとづいて、三鑑定とその証明力を減殺させている山下意見書の評価を完全に誤ったものと言うほかなく、破棄されなければならない。

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