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第一五、U・K証言に対する原決定の判断の誤りについて

        

 原決定は、新証拠であるU・Kの昭和三八年六月五日付司法警察員に対する供述調書は第一審第五回でのU・Kの証言と同旨であり、実質的にみて新証拠といえるか疑問であるのみならず、これを確定判決審の関係証拠と併せ検討してもじ証言の信用性に疑問を抱かせる点は見出せず、確定判決の認定を揺るがすのものではないとしている。
 しかし、U証人は、公判廷において、五月一日同人宅に現れた人物と請求人の顔かたちが似ていると思うと証言したに過ぎない。その上、同証人は、右の事を事件の発生後一ヵ月以上も後になってようやく警察に申告したのであり、しかも、その際にいわゆる面通しによって人物の同一性を確認するについても、多人数の中から特定の人物を抽出するという方法さえとられていないのである。したがって、仮に事件当日じ証人方へ中田宅の所在を尋ねてきた人物があったとしても、明かりの十分でない所で、極めて短時間の接触をしたに過ぎないのであるから、面通しの方法・時期を考え合わせると、目撃証言としての証拠価値は認められないことが明らかである。
 U証言については、まず何よりも、これから被害者宅に脅迫状を届けに行こうとする真犯人が、被害者宅の所在が分からず、顔を覚えられる危険を犯して、適当なところで被害者宅の所在を確認したということの不自然性・非現実性という観点から検討されなければならない。このようなことが現実に起こり得るとするのは、明らかに一般的な常識に反することと言うほかない。
 前記U員面調書は、事件発生後一ヵ月以上もたってからの供述であり、人物描写はきわめて不十分で、目撃した人物の顔についても、唯一「面長」であることしか印象に残っておらず、具体的なことは何一つ述べられていない。同調書によれば、同人が目撃したのは「二間位」離れた位置から、「四十ワットの電球」の下で、「一、二分の短い間」であり、同人の供述に信用性がないことを自ら語っているのである。このことを否定しようとする決定の判断は、経験則を無視したきわめて不当なものである。
 U証言は、現実の問題として成立する余地もない。そして、内田証言に沿うような内容を含む請求人の自白もまた非現実的なものといわざるを得ない。請求人の自白の中にU証言に沿う供述があるということは、かえって、自白に不当な誘導のあったことを示しているのであり、ひいては請求人が真犯人であり得ないことを明らかにしているのである。原決定は破棄されなければならない。

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