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第一九、指紋に対する原決定の判断の誤り

       

 原決定は指紋に関する弁護人ら提出の意見書、鑑定書を却けたが、その理由とするところは、「一般に、手指で紙などに触れた事実があり、その分泌物の付着も十分であったはずでも、その触れた個所から、異同の対照が可能な程に鮮明な指紋が必ず検出されるとは限らない」との一般論を越えるものではない。本件自白内容の特殊性、すなわち脅迫状作成に相当の時間を要したこと、筆圧も強かったこと、作成後数日持ち歩いていたこと、被害者宅に封筒ごと差し込む直前封筒を切って確認をしていることなどは一切捨象されている。差し込まれた封筒から脅迫状を取り出し、これを読んだ後駐在所に届け出たにとどまる被害者の兄の指紋、右封筒・脅迫状を受理して本署に持参したにとどまる派出所の巡査の指紋が脅迫状から一個宛検出されているのに比して、請求人の自白によれば、脅迫状・封筒に同人が接触する頻度は、右両人よりはるかに高かったにもかかわらず、請求人の指紋が一個も検出されなかったことは極めて不自然であると言わなければならない。
 対照不可能な指紋にしても、脅迫状から二個、封筒から三個検出されたにとどまっている。脅迫状の作成者は手袋を着用していたものと考える他ないくらいの少数である。
 原決定は軍手様の手袋痕が付着しているとの斎藤鑑定書の指摘を否定しているが、右指摘による手袋痕は封筒の開封の仕方をも推認させるものであって、長年指紋業務に専念してきた斎藤鑑定人の指摘はたやすく否定されるべきものではない。これに本件脅迫状・封筒の指紋検出の結果を併せれば、脅迫状の作成者が作成時前後を通して手袋を着用していたものと考えるのが合理的である。
 原決定の理由は不備であり、違法たるを免れない。

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