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第二〇、佐野屋付近での体験事実についての原決定の誤りについて

         

 原決定は、身代金喝取の目的で佐野屋東側畑に赴き、N・Tと問答を交わした後逃走したという請求人の自白が虚偽であることを、視覚的認知の状況から解明した増田鑑定と、発生音を聴取できるかどうかという立場から解明した藤井・小林鑑定にたいし、「一般に、真犯人でなければ認識し得ない事象を記憶していて、後に捜査官に対して、これを的確に再生して供述する場合がある反面、確定判決も指摘するとおり、真犯人であれば当然自分の行動にまつわる周囲の状況の詳細を認識、銘記しており、自白する以上は、捜査官の取り調べに対して、その記憶どおりに率直に供述するはずであるとは、必ずしもいえない」として、両鑑定の結論を否定した。
 しかしながら、N・Tと問答した際の状況についての請求人の自白は、ある程度の一貫性と具体性をもっているのであり、「小母さんのような人が来て」「小母さんは白っぽいものを着ていました」「女の人の横の方に誰か男が立っているように見えました」「私は女の人の姿はみましたがその時の明るさは男か女の見分けがつく程度の明るさであったので」「身の丈は私位と思いました」「女の後にもう一人誰か居る様だったので」という請求人の自白が、「推定照度値よりも高い照度での認知実験においても、対象が動いた場合でなんとか人間の姿・形が認められる程度であり、性別の認知はできなかった」という増田鑑定の結果と矛盾をきたすことについて、原決定はいかなる合理的な理由も示せていない。
 増田鑑定、藤井・小林鑑定は、自白の非体験性、虚偽架空性を科学的に明らかにしたものであり、「請求人の供述内容が不自然で、虚偽であるとはいえない」とした原決定の誤りは明らかというべきである。

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