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原決定は、本件姦淫の態様が暴力的ではないとする弁護人ら提出の鑑定書、意見書等を却けたが、その理由とするところは被害者が発見されたさいの状況(両手を手拭で後ろ手に縛られ、両足を動かす程度しか抵抗できない状態)をそのまま姦淫行為時の状況に引き写したということに尽きる。
しかしながら、問題は死体自体から合理的に推認される姦淫の態様と自白におけるそれとの間に矛盾が存するか否かにある。原決定のように最初から自白と符合する発見時の被害者の状況に軍配を挙げるのでは、方法論的に矛盾の存否検討を拒否するに等しい。右のような判断方法をとる限り、外陰部その他の損傷という死体に残された客観的状況が暴力的姦淫の痕跡であるか否かの法医学的検討が全く等閑視されるのは当然である。このため例えば木村意見書における説得的な論述も全く無視されることとなり、原判決には明らかに理由欠落の違法がある。
なお、五十嵐鑑定書の外陰部所見中には「外子宮口は横裂状を呈」するとある。「学生のための法医学」(一九八〇年商山堂刊一四七頁)によれば、「産褥には必ずくるが、その他の場合にも起こりうる変化」の一つとして「外子宮口の開大裂創」が挙げられている。さらに右所見中には処女膜に遊離縁より附着基部に達する陳旧性亀裂3条が存することが記述されている。以上によれば、被害者は本件被害以前の時期にすでに性行為を体験していることとなる。本件姦淫の態様が暴力的なものではないとする弁護人らの援用する意見書を補強する事実である。
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