部落解放同盟東京都連合会

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まとめ

 以上、確定判決が有罪証拠の主軸とした脅迫状に関わる原決定の判断の誤りを指摘してきた。原決定は、それ自体が極めてあいまいな「文書作成の経緯、環境、書き手の置かれた心理的立場、状況の違い」の影響を持ち出して、請求人自筆の文書と脅迫状との間に見られる相異点をごまかし、また、脅迫状の書写による請求人の筆跡の変化を否定しようとしているが、このような論旨は不当である。原決定が、文書作成の経緯、環境、書き手の置かれた心理的立場、状況の違いの影響を言うならば、確定判決の依拠した三鑑定をこそ再検討しなければならないはずであり、筆跡の相異点をごまかし、弁護側鑑定を否定するためにだけ、このような論理を持ち出すことは許されない。また、原決定は、弁護人提出の筆跡新証拠に対しても、個々に切り離して評価し、しかもその主張・指摘するところの一部を取り出して否定するというやり方を取っており、新旧証拠の総合評価をおこなったとは言えない。
 弁護人は、一九八八年一〇月一五日付「筆跡鑑定に関する調査結果について」(弁護人松本健男、青木孝外三名作成の調査報告書)、一九九六年四月一三日付追加意見書、一九九七年二月一入日付追加意見書等において、確定判決が依拠した筆跡三鑑定には、鑑定方法、資料の適格性、文字選択の窓意性の問題があるとともに、相異性の無視、常同性・稀少性の検討の無視など重大な欠陥があり、鑑定結果が誤りであることを明らかにし、三鑑定によっては、脅迫状の筆跡を請求人の筆跡とは認定しえないこと、あわせて、請求人と脅迫状・封筒との結びつきを否定する状況証拠が多数存在することを指摘した。しかしながら、原決定は、右弁護団調査報告書にも触れず、弁護人の指摘に従つて、三鑑定の内容を検討することも怠って、「三鑑定の判定が説得力を持ち、合理性が認められる」と結論しただけであって、弁護人が再三にわたつて主張したところの鑑定人尋問も実施せず、三鑑定の再評価と新証拠との総合評価をしなかったのであり、再審の法理に反したものとして原決定を破棄し、ただちに本件再審が開始されるべきである。

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