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行政書士らが興信所へ大量の戸籍を密売
1990年9月1日、読売新聞は、夕刊のトップで行政書士が戸籍謄本を不正入手し、興信所に転売していたことを報じました。
東京日野市に在住するK社会保険労務士兼行政書士と八王子市に事務所をおくT行政書士は、大阪の身元調査専門の興信所から依頼を受け、全国各地の自治体から他人の戸籍謄本を大量に不正入手していました。ふたりは入手した戸籍謄本をファックスで依頼元の興信所へ送り、1通あたり数万円の謝礼を受けとっていたのです。
第三者による戸籍の閲覧・請求は、1976年の戸籍法改正により禁止されました。戸籍が身元調査に利用され、悪質な結婚差別・就職差別が後を絶たなかったからです。結婚差別を受けた被差別部落の青年の中には、自ら命を絶った痛ましいケースもありました。戸籍法の改正によって自分の謄本を請求する場合も、請求目的を明記させるなど、プライバシー保護の観点から、大幅な規制がくわえられました。
しかしこの戸籍法改正の時に、行政書士、弁護士、税理士、社会保険労務士などの特定の8業種の専門資格職にあるものについては、職務上必要な場合のみ、他人の戸籍を請求できる「特権」を認められました。K、Tの両名は、この「特権」を悪用したのです。
両名は、戸籍請求用紙の請求目的に「遺言状の作成」「遺産協議分割書の作成」などの架空の理由を記入し、あたかも、職務上の請求であるかのように偽り、専門資格職の「特権」を悪用して、戸籍を不正入手していました。
また、行政書士および社会保険労務士が、他人の戸籍を請求する場合には、所属する行政書士会などの団体から統一の請求用紙が発行されていますが、K、Tの両名は、この請求用紙を行政書士会、社会保険労務士会から、通常では考えられないほど大量に購入していました。しかも、驚くことにKが1750枚、Tが2700枚もの請求用紙を「行方不明」にしていたのです。われわれの事情聴取に、Kは「紛失した」、Tは「1000枚焼却した」と答えました。しかし、彼ら行政書士にとって重要な用紙を、大量に「紛失」「焼却」したとは、とうてい考えられないことです。
裁判所はこの事件について、少なくともTが6件、Kが10件の「不正請求をした」ことは間違いないとして、処分を下しています。部落解放同盟東京都連合会 http://www.asahi-net.or.jp/~mg5s-hsgw/