《資料》
1.「機会の平等」と改めて特定することは問題である。
(1)<骨子>において、「機会の平等」をどういう意味で使用しているか定かではありませんが、「機会の平等」と「部落差別」の関連について、同和対策審議会答申は以下のように述べています。あたりまえの「機会」が奪われていることが差別であり、その解決のために「特別措置」を実施しているのです。
近代社会における部落差別とは、ひとくちにいえば、市民的権利、自由の侵害にほかならない。市民的権利、自由とは、職業選択の自由、教育の機会均等を保障される権利、居住及び移転の自由、結婚の自由などであり、これらの権利と自由が同和地区住民に対しては完全に保障されていないことが差別なのである。(「同和問題の本質」の項より)
(2)「東京構想2000(中間まとめ)」の考え方を反映しているように思えます(下記参照)。この文章の全体的な考え方の評価はここではしませんが、「結果の平等」を否定した上で「機会の平等」を主張しています。「人権指針」では、この一面を抜き出したとしかいえないような記述になっています。これまでの人権施策に関して、「結果の平等」に関するどういう施策がおこなわれ、それにはどのような問題があったのか、被差別当事者と充分協議した上での結論ならばまだ分かりますが、そういう協議もなく、別の概念を機械的に「人権指針」に適用することは大きな問題です。
個人、企業、団体等各主体が、持てる能力を最大限発揮できるシステムの構築をめざす。すなわち、結果の平等ではなく、積極的な挑戦を促す機会の平等とその成果を正当に評価するという「新しい公正の原理」を重視する社会を築いていく。そのためには個人や企業が、たとえ挑戦に失敗した場合でも、致命的な事態に陥らないように、セーフティネットを構築しておくことも必要である。(「1
新しい社会システムの構築」36pより)
(3)基本的に「機会の平等」と「結果の平等」は対立的に捉えるものではありません。東京都男女平等参画基本条例(2000年4月1日施行)においても「積極的改善措置」を目的に含めています。
(前文より) 「…男女を問わず一人一人に、その個性と能力を十分に発揮する機会が確保されていることが重要である。…」
(目的より) 「…男女平等参画の促進に関する施策(積極的改善措置を含む)を総合的かつ効果的に促進し、もって男女平等参画社会を実現する…」
(定義より )「積極的改善措置 社会のあらゆる分野における活動に参画する機会についての男女間の格差を改善するため、必要な範囲において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう」
2.差別意識は「着実に解消していない」。
「人権指針」では、「同和問題に関する差別意識は着実に解消に向けて進んでいるが、…・事例も起きている」と記述されています。「着実に解消」の根拠はよく分かりませんが、1993年の政府の実態調査、1999年の東京都の人権に関する世論調査をみると差別意識は根深く存在していることが分かります。
(以下〈1〉〜〈3〉総務庁の「同和地区実態把握等調査」1993年より)
〈1〉結婚相手を決めるときに家柄とか血筋を問題にする風習をどう思うか。
・当然のことと思う
13.5%
・おかしいと思うが自分だけ反対しても仕方ない
29.8%
・なくすべきだ
55%
・不明
1.6%
※以上見ても分かるとおり、43.3%の人が何らかの形で結婚に際して家柄を気にするという深刻な結果が出ています。
〈2〉子どもが結婚しようとする相手が同和地区の人と分かった場合どうするか。
・絶対に結婚させない
4.9%
・家族のものや親戚の反対があれば結婚させない
4.7%
・親としては反対するが子どもの意志が強ければ仕方ない
30.6%
・子どもの意志を尊重
58.4%
・不明
1.3%
※反対の可能性がある回答は40.2%にもなります。
〈3〉同和地区の人と結婚しようとしたとき親や親戚から強い反対を受けたらどうするか。
・説得に全力を傾けて結婚する
57.7%
・自分の意志を貫く
27.7%
・反対があればしない
14.6%
・絶対にしない
0%
※14.6%の若者が、親の反対があれば結婚しないという深刻な結果がでています。
(以下〈4〉〜〈6〉東京都人権に関する世論調査1999年より)
〈4〉日頃付き合いがある隣近所の人が同和地区の人であると分かった場合どうするか。
・これまでと同じようにひた親しくつきあう
76.5%
・できるだけつきあいはさける
4.9%
・つきあいをやめる
0.3%
・近所から出るように仕向ける
0.1%
・自分から住所を変わる
0.2%
・分からない
17.9%
・無回答
0.1%
※「分からない」含めて、「これまでと同じようにつきあう」以外が、23.5%もあります。
〈5〉子どもが結婚しようとする相手が同和地区の人と分かった場合どうするか。
・子どもの意志を尊重
53.9%
・親は反対、子の意志が強ければ仕方ない
19.0%
・家族や親戚の反対があれば認めない
2.0%
・絶対認めない
1.9%
・分からない
23.1%
・無回答
0.1%
※「子どもの意志を尊重」以外が、46.1%もあります。
〈6〉同和地区の人と結婚しようとしたとき親や親戚から強い反対を受けたらどうするか。
・意志を貫いて結婚
28.9%
・親の説得に全力を傾けた後結婚
39.3%
・反対があればしない
3.9%
・絶対しない
0.9%
・分からない
27.0%
※若者たちの中でも「意志を貫いて結婚する」あるいは「親の説得に全力を傾けた後結婚」は、68.2%しかいない。31.8%が曖昧もしくは否定的なな態度をとったままです。