部落差別にもとづく冤罪・狭山57年!
確定判決に合理的疑いが生じている今
再審開始こそ、司法の正義!
1963年5月1日、埼玉県狭山市で起きた女子高校生誘拐殺人事件=狭山事件は、事件発生、被差別部落民・石川一雄さんが不当逮捕され殺人犯にでっち上げられてから57年、確定有罪判決(寺尾差別判決)から46年が経過しました。
石川さんの無実を証明する新証拠が次々と出される中、第三次再審の闘いに決着をつける時が確実に迫っています。
再審請求の審理においては、これまでに弁護団が提出してきた新証拠が、確定判決が出された裁判中に提出されていたとしたら、有罪判決の認定になったかどうかという観点から、新証拠と旧証拠を総合的に見て、判決に疑問が生じるかどうかを判断するとされています。
冤罪・狭山事件57年。第三次再審請求から15年。これ以上の審理の長期化は人道上においても許されるものではありません。東京高裁第4刑事部・大野勝則裁判長は「無実の人を冤罪から救済する」という再審の理念、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に従って、司法の正義を実現すべく、早急に再審を開始しなければなりません。
確定有罪判決の根拠・主軸は完全崩壊へ!
狭山弁護団は、2009年の証拠開示勧告以降、検察側から開示させてきた証拠物の分析から、現時点までに241点もの石川さんの無実を証明する科学的新証拠を裁判所に提出し、再審の要件である「確定判決に合理的疑いが生じている」どころか、確定判決の根拠・主軸は完全に崩壊しています。
確定判決(1974年10月31日、2審・東京高裁・寺尾正二裁判長)は有罪の根拠として、石川さんと犯行を結びつける7つの客観的証拠があるとしています。それは、①脅迫状と石川さんの筆跡が一致する、②身代金受け渡し現場の足跡と石川さん宅の地下足袋が一致する、③被害者を後ろ手に縛った手ぬぐい、目隠しに使ったタオルは石川さんの家のもの、④犯人の血液型はB型で石川さんと一致する、⑤死体を埋めるために使われたスコップはI養豚場のもので石川さんが盗んで使った、⑥犯人の声と石川さんの声の一致、⑦目撃証言がある、といった客観的な証拠が石川さんと犯行との結びつきを示すものだとしています。その上で、カバン、万年筆、腕時計など、被害者の所持品が自白通りに発見されたことを「秘密の暴露」(犯人しか知り得ない事実が自白で判明した)として自白が信用できる根拠としてあげ、さらに、自白は客観的事実と矛盾しておらず信用できる、としています。
確定有罪判決を構成しているこれらの根拠は、これまでに弁護団が提出してきた科学的新証拠によってすべて覆され、「秘密の暴露」は、犯行についてまったく知らない「無知の暴露」となって、石川さんの無実を証明するものとなっています。
石川さんは脅迫状を書いていない、書けない!
非科学的なスコップの鑑定は部落への集中見込捜査へ
発見された万年筆は被害者のものではない、ニセ物!
石川さんの無実を明白に証明する新証拠の中でも、脅迫状は石川さんが書いたものではないことを科学的に明らかにした福江鑑定は重要な新証拠です。脅迫状は、99.9%以上の確率で石川さんではない別人が書いたものであることが最新の科学的な筆跡鑑定において明確に証明されました。
真の犯人が残した物的重要証拠である脅迫状に関しては、証拠開示された取調べ録音テープの分析もふまえて、石川さんには脅迫状を書くことができなかったことを明らかにした森鑑定、同じく、取調べ録音テープにもとづき虚偽自白のでっち上げ過程を明らかにした心理学鑑定である浜田鑑定などによって、脅迫状を石川さんは書いていないこと、無実であることが証明されています。
また、スコップに関しては、死体を埋めるのに使用されたとも、I養豚場のものと特定することもできないと科学的に指摘し、警察の鑑識員によるスコップ(土壌)の非科学的鑑定とI養豚場との強引な結びつけが部落への集中見込み調査の契機となったことも強く主張した平岡第1、第2鑑定も出されています。
さらに、石川さん宅から発見された被害者のものとされる万年筆についての下山鑑定人による第1鑑定は、発見万年筆には被害者が事件当日まで使用していた万年筆のインクが入っていなかったことをインクの含有成分の違いから証明し、第2鑑定では、インクの構成元素の違いによっても、発見万年筆は被害者のものではない、ニセ物であることを完璧に証明しました。そして、確定判決がいう「インク補充説」も完全に突き崩し、証拠のねつ造までも明示しました。この下山第2鑑定は、検察側も反証できない決定的な新証拠です。まさに、46年前の確定有罪判決の主軸、根拠は完全に崩れています。
当面する最重要課題は、鑑定人尋問の実施
合言葉は「事実調べなくして、再審開始なし!」
再審の要件である確定判決に合理的疑いが生じているどころか、すべての有罪根拠を覆す新証拠が次々と出されているにもかかわらず、鑑定人尋問や証人尋問、証拠調べなどの事実調べ実施に踏み切らない裁判長、および、新証拠への科学的実証を伴わない反証・反論を繰り返し、裁判の引き伸ばしを図っているともとれる検察官との攻防が続いています。
裁判所は、双方の主張が出そろった段階で事実調べの必要性を判断するとしており、弁護団は現在、裁判所の判断基準に則って、新証拠により有罪判決を完璧に突き崩していくための論点を整理し、今年の早い段階で鑑定人尋問などの事実調べを請求していくとしています。まさに第三次再審の審理は最終段階を迎えています。
狭山事件においては、確定判決以降、事実調べが一度もおこなわれていません。再度確認すべきことは、事実調べが実施されない再審裁判は必ず棄却されており、事実調べが実施された再審裁判は必ず再審が開始されている、という事実です。今、私たちの闘いの合言葉は、「事実調べなくして、再審開始なし!」であり、再審開始の絶対必要条件である事実調べを実施させることが突破すべき最重要の関門であることを改めて確認し、一刻も早く事実調べを実施させましょう。
2021年こそ、再審開始決定を!
最終段階を迎えた第三次再審の闘いは、まさに今が勝負!
事実調べを求める声を裁判長に集中しよう!
狭山東京実行委員会は、当面、大規模な集会開催を回避しなければならない状況において、歩みを止めない取り組みを提起し、東京高裁第4刑事部・大野勝則裁判長に向けて事実調べ実施を求める4種類の新たな要請ハガキを作成しました。2月〜3月期、連日、事実調べを求めるハガキを大野裁判長に送る運動がすでに開始されています。東京都連のホームページから要請ハガキのひな形をダウンロードして頂き、支援者の皆さんに、一人でも多くの方々に取り組んで頂くことを呼びかけるとともに、署名運動や東京高裁への要請行動など、引き続き裁判所に石川さんは無実だ!事実調べを行え!再審を開始しろ!といった声を届ける取り組みの強化を改めて呼びかけます
コロナ禍において、再審勝利に向けた様々な取り組みが中止となる中、先日82歳を迎えた石川さんは、体調管理・体力維持につとめつつ、全国の支援者への手紙やメッセージ動画配信など、今できる闘いに精いっぱいの力を注いでいます。石川さん、お連れ合いの早智子さんの切なる思いをしっかりと受け止め、皆さん一人一人の狭山を今こそ動かしていきましょう。そして、2021年こそ、事実調べを実現し、再審開始決定を勝ち取りましょう!