筆跡や書字能力の違いは一目瞭然


1963年の逮捕当日 石川さんが欠かされた上申書 犯人が残した脅迫状

  石川さんは部落差別によって教育を十分にうける事ができなかったために「っ」の促音、「ゃ」、「ゅ」、「ょ」の拗音、「う」、「ん」や長音などの表記ルールを習得できず、ひらがな表記も正しく書けませんでした。

 それが犯人の脅迫状との大きな違いです。

 石川さんが事件当時、非識字者だったことは取調べ録音テープからも明らかです。

 例えば、図面の説明文では、「粕谷自動車工場」と書くべきところを「かすやじどをじやじゆりこをじを」と書いており、拗音が3つとも間違い、「う」も正しく表記できていません。

 取調べ録音テープでは、警察官が「『じどうしゃ』『じどう』『う』」と1字ないし数文字ごとに読み上げ、石川さんは1字1字発語して、時間をかけて、文字を思い起こしながらようやく書いています。

 脅迫状では犯人が「金二十万円」と漢字で書いていますが、石川さんの上申書では「20まいいん」「に10まんい」と書かれ、ひらがなの表記に誤りがあります。

 脅迫状には当て字はありますが、誤字はありません。

 脅迫状は終筆部で力を抜いて流れるように書かれていますが、石川さんの文字は1字ずつぎこちなく、強い筆圧で書かれています。

 しかし、脅迫状では「気んじょ」「いった」など、拗音も促音もしっかりと書かれています。

 この書字能力の違いは、国語能力の差であり、犯人と石川さんの決定的な違いです。



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