99.%別人によって筆記されたもの 福江報告書


脅迫状と上申書は99.9%別人の筆跡

 2018年1月15日に提出された、福江潔也・東海大学教授による「脅迫状と上申書間におけるコンピュータによる筆者異同識別」など報告書2通は、狭山事件で犯人が届けた脅迫状と、石川さんが書いた上申書(1963年5月21日付け)、石川さんが浦和拘置所にいたときに書いた自筆の手紙2通(1963年9月、10月に書かれたもの)を検査対象として、コンピュータによる筆者異同識別を行なったもので、脅迫状と上申書・手紙は「平均識別精度99.9%であきらかに別人により筆記されたものである」と結論付けています。

 つまり、脅迫状を書いたのは石川さんではなく、全くの別人ということなのです。

 福江報告書の判定方法は、コンピュータを使って文字を読み取り、字形の情報を数値化し、文字を重ね合わせたときの「マッチング残差(文字のズレ)」を計測するものです。

 脅迫状と上申書・手紙にくりかえし出てくる「い、た、て、と」の4文字を対象として、マッチング残差を計測することで筆跡の相違度(ズレ量)が客観的に数値化され、同一人の筆跡かどうかを統計的に比較することができます。

 では、なぜこの4文字を計測、比較の対象としたのか。

 上申書・手紙に「い、た、て、と」の4文字がくりかえし出てくるという理由もありますが、漢字よりも平仮名の方が何回書いても「書きムラ」が出にくく、さらに、福江教授の研究室は同一人が多数回「い、た、て、と」の文字を書いた際の相違度について、統計的な資料を有していることから、「い、た、て、と」の4文字を対象としています。

 すべての筆跡の組み合わせについて計測したところ、個人内の書きムラでは説明できない大きな相違度があることが明らかになりました。

 福江報告書のポイントとしては、「すべての処理がコンピュータで行なわれることにより、科学的意味合いが強く、鑑定人の主観が入る余地がない」という点です。福江報告書で行なわれた鑑定は、人が観察し判定していた従来の筆跡鑑定とは違い、客観性の強い科学的鑑定なのです。

 有罪の決め手となった脅迫状を石川さんが書いていないことが福江報告書によって科学的に証明されたことで、脅迫状と上申書が同一人の筆跡であるという確定有罪判決の認定に合理的疑いが生じていることは明らかです。



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