《緊急記者会見の模様》
今回の決定には納得できない
2002年1月25日午前、東京六本木の松本治一郎記念会館において、石川さんと狭山弁護団そして部落解放同盟による合同記者会見がおこなわれました。その会見記録を紹介します。
私は無実です。なぜ事実調べをおこなって頂けないのか
石川一雄さん
早朝から皆様集まっていただき、感謝します。
私は前回(99年の高木棄却決定の時)同様、徳島の方で集会がありましたので行っておりましたが、「棄却された」ということで昨日遅くかえってまいりました。多くの新証拠が出ているので、裁判所の勇気ある判断を期待していたんですけど、残念です。高木決定を追認し、科学的な斎藤さんの鑑定すらきちんと検討していただけなかった。非常に怒りを感じています。
でも私は無実です。そしてそのことは証拠をもって証明されています。裁判所が誠意・誠実をもって事実調べをやれば、必ず私の無実ははれると信じて、今度は最高裁に望みをかけようと思っております。38年間の間にいろんな証拠が出ております。特に現在は科学的な鑑定ができるので、私は、裁判官がこれを見たら、事実が分かったんではないか、でも「決定を維持する」という結論が先にあって、それで事実調べもおこなわないまま棄却されたのではないかと思います。本当に悔しくてなりません。でも私は、裁判官が私の無実を認めてくれるまでは、とことん司法を追及していきます。
はけない足袋が、棄却決定の中ではけたことになっています。私は、裁判長の目の前で、証拠として残っている問題の足袋をはかしてもらいたい。事実調べをやっていただければ分かることなんです。
私は無実です。ですから皆さん、どうか私の上に重くのしかかっている「殺人犯」というこのレッテルを、どうか皆さんのお力ではがしていただきたい。お願いします。早朝よりこんなに多くの皆さんが駆けつけていただき、本当にありがとうございます。
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前決定を追認しただけの全く内容のない驚くべき決定
狭山弁護団事務局長 中山武敏 弁護士
1月23日付の「狭山事件の異議申し立てに対する棄却決定文」が、昨日24日午後弁護団に送付されてきました。分量は、A4版90ページ約86000字にのぼります。しかしその中身は、ほとんどが弁護団の主張と弁護側が提出した新証拠・鑑定書等の文言の繰り返しであって、内容はほとんどありません。99年に東京高裁高木裁判長が出した再審棄却決定をただ追認しただけのものです。東京高裁に行ったことのある方ならご存じだと思いますが、99年に再審棄却決定を出した第4刑事部と、今回異議申し立てを棄却した第5刑事部は、入り口が違うだけで同じ部屋にあります。棄却決定が誤りであるかどうか審査するという第5刑事部の役割が、裁判所内のなれ合いの中で今回全く果たされていないというのが実感です。
また、狭山事件に関しては、第2審以降現場検証とか証人尋問、つまり事実調べが全くおこなわれていません。今回もおこなわれませんでした。このことについて、30年間裁判官を勤め札幌高裁の裁判長もされた渡辺保夫さんら81人の法学者が「狭山事件の事実調べをおこなわないのはおかしい。事実調べをすべきだ」という意見書を提出していました。ところがそのことについても「事実調べの必要性は裁判所の合理的な裁量によって決すべきものだ。事実調べをしなかったことがその裁量の範囲を逸脱し合理性を欠くものと認めるべき事情は存在しない」の一言で済ませています。
確定判決は、石川さんの「自白」を離れても客観的な証拠から石川さんの有罪が認定できるとして、その証拠の主軸を「脅迫状」の筆跡としています。ですから弁護団は、第2次再審で9通の筆跡鑑定を出しました、そして異議審でも6通の鑑定書を出しています。今回の棄却決定は、石川さんの事件当時に警察に書かされた「上申書」の筆跡と「脅迫状」の筆跡が違っていることを認めています。ところが「原決定(高木決定)が指摘するように、書字・表記、その筆圧、筆勢、文字の巧拙等は、その書く環境、書き手の立場、心理状態等により多分に影響され得る」として、(高木決定に何ら再検討を加えることなく)弁護側の主張を排斥しています。今司法制度審議会が「一般の市民が裁判に参加する必要性がある」という意見書を出していますが、今回裁判所の言うようなことが本当に市民常識として成り立つのか、極めて不当と言わなくてはならない。最も証拠の主軸とされているもので、このような理解できない理屈が通ってよいのか。
狭山事件にかかわる物証とされるものからは、石川さんの指紋が一つも発見されていません。これについて弁護団は、元警察鑑識課員でこの道20年以上のプロである斎藤保さんが鑑定をおこない、石川さんが真犯人ならこんな事はあり得ないという証拠も出しています。このことは公開で実験もおこない、自白通りにやったら多数の指紋が検出されることが確かめられました。しかし今回の決定では、このことについても「必ずしも指紋が検出できるとは言えない」と、明白性を認めていません。事実調べもしないで、このような結論が許されるのか。
いわゆる「鴨居の上の万年筆」についても、全く何の検討もせずに棄却しています。まさに全く内容がないというのが弁護団の実感です。弁護団は今特別抗告申立書を作成しており、1月29日午後に最高裁に提出する予定です。弁護団は石川さんとともに、このような不当な裁判所の判断と徹底的に争っていくことを改めて表明します。
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絶対に承伏できない特別抗告で闘う
部落解放同盟 書記長 高橋正人
鑑定人尋問をおこなうことなく棄却した今回の決定については、我々としては絶対に承伏できません。怒りを持って抗議したい。今回弁護団が提出した様々な新証拠鑑定について、棄却決定は「独断に過ぎない」とか「一つの推論に過ぎない」などと否定しますが、それ自体が裁判所の独断、決めつけなのではないか。我々はそう思わざるを得ない。きちんと事実調べをやっていただければこういう結論にはならないと思います。市民常識、そして「白鳥・財田川決定」に逆行するものであり許せません。石川さん弁護団とともに、我々は最後まで闘うことを表明します。また特別抗告をする1月29日15時から、緊急の集会をひらき、闘いの意志を広く訴えたいと思います。
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