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緊急声名

          

部落解放同盟が緊急抗議声明を発表

           

 部落解放同盟は、2005年3月16日(付け)の最高裁による狭山第2次再審請求特別抗告棄却決定に抗議する緊急声明を発表しました。以下にその全文を紹介します。


最高裁による狭山事件の特別抗告棄却決定に断固抗議する!

2005年3月17日

部落解放同盟中央本部

中央執行委員長 組坂繁之

 最高裁判所第1小法廷は、3月16日付で狭山事件の第2次再審請求における特別抗告申立を棄却する決定をおこなった。
 3月24日に、弁護団は、最高裁に2通の筆跡・筆記能力に関する新証拠と補充書を提出する旨を伝え、調査官との面会も約束していた。また、その翌日の3月25日には、「狭山事件の再審を求める市民の会」が、庭山英雄弁護士、ルポライターの鎌田慧さんらを中心に、全国で集められた事実調べを求める40万人分の署名を提出することを最高裁に伝えていたのである。こうした弁護団との約束や国民の声をふみにじる、抜き打ち的な棄却決定であり、わたしたちは満腔の怒りをもって抗議する。

 この間、鎌田慧さんの著書『狭山事件 石川一雄、41年目の真実』が多くの人に読まれ、テレビ番組「ザ・スクープスペシャル」でも特集されるなど、マスコミで、えん罪・狭山事件がとりあげられていた。狭山事件の公正な裁判、事実調べー再審開始を求める世論は広がり、学者・文化人らが呼びかけた新100万人署名も急速に集まり、昨年10月29日に43万人分が最高裁に出され、さらに間もなく100万人になろうとしていた。今回の棄却決定は、こうした世論の高まりを恐れ、さらに大きくなる前に、棄却決定を強行した司法権力の暴挙といわざるをえない。

 第2次再審請求では、元警察鑑識課員の齋藤保・指紋鑑定士による5通におよぶ鑑定書が出され、犯人の残した封筒の「少時」記載部分が万年筆で書かれていることや「抹消文字・2条線痕」があることなどを指摘し、犯人が犯行前から万年筆を使用していることが明らかになっていた。しかし、最高裁は、鑑定人尋問などの事実調べをおこなうことなく特別抗告を棄却した。「少時」が万年筆で書かれていることや抹消文字の存在、ボールペンと万年筆の2種類の筆記用具が使われていることを指摘していた元警察鑑識課員の齋藤正勝鑑定書、奥田豊鑑定書には棄却決定はまったく触れず、「肉眼で観察したところ『少時』と『様』が別の筆記用具で書かれたと認められない」と勝手に決めつけている。少なくとも、犯罪捜査に長年たずさわってきた3人の元警察鑑識課員が鑑定しているのであるから、「肉眼で観察」などと言う前に、鑑定人尋問をおこなって判断すべきである。  さらに、今回の棄却決定は、万年筆が使われた痕跡については完全には否定しきれず、「実物を観察しても(そのような痕跡があるかどうか)判然としない」とごまかし、さらに石川さんが当時万年筆を所持していた公算が高いという趣旨の驚くべき恣意的判断をしている。しかし、その根拠としている供述調書は、何ら証拠調べもせず、最高裁が一方的に持ち出してきたものである。事実調べもやらずに、石川さんが万年筆を持っていた可能性もあるなどというあらたな認定を持ち出して有罪を維持することじたいが、再審の理念、趣旨に反している。

 部落差別によって教育を奪われた非識字者の実態を十分理解し、石川さんと脅迫状の国語能力の違いを調べるべきだという主張にたいしても、棄却決定は識字の視点から出された意見書を無視して、「当時の石川さんには脅迫状は書けた」と一方的に決めつけている。

 19年近くにおよんだ第2次再審請求で、弁護団は19通の筆跡鑑定書、齋藤鑑定人による5通の鑑定書、3次元スキャナによる足跡鑑定書など数多くの専門家による鑑定書を提出していたにもかかわらず、一度の事実調べもおこなわれなかったのである。あまりに不公平・不公正ではないか。狭山事件の裁判では確定判決以来30年以上もまったく事実調べがおこなわれていないことの不公平さをあらためて強く強く訴えたい。
 このように、今回の最高裁の棄却決定は、異議審における新証拠を「不適法な証拠」というなど、同じ最高裁第1小法廷が出した「白鳥・財田川決定」で示された「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を再審請求にも適用すべきとした判例にも反し、昨今の袴田事件、大崎事件の棄却決定とも共通する再審の理念をふみにじる不当な決定である。
 一昨年暮に、特別抗告審闘争半ばに亡くなられた山上益朗・前主任弁護人は、くりかえし、最高裁に「新証拠をこれまでの証拠と総合的に評価せよ」「自白を再検討せよ」と申し入れたが、最高裁はまったく答えなかった。
 弁護団は、最高裁にたいして証拠開示命令・勧告の申立をおこなっていたが、これにもまったく答えていない。検察官は、開示請求された証拠について存在しないとして応じておらず、最高裁は証拠リストを弁護側に提示し、証拠開示請求に積極的に応じるよう勧告ないし命令すべきはずであったが、それもしなかった。
 日本の最高裁はいつから「検察官」になったのか。「裁判員制度」が導入され、市民が司法に参加する時代を迎え、いまもっとも市民の常識的な判断に耳を傾けなければならないこの時期に、最高裁は、市民常識と国民世論からまったくかけ離れた存在になっていること、日本の司法が人権をふみにじる姿を国内外にさらけだしたのである。
 わたしたちは、くやしさを乗り越えて、「えん罪を晴らすまで闘う」という石川一雄さんの決意、「見えない手錠をはずしたい」と訴えた早智子さんの思いにこたえるとともに、第3次再審請求をただちに準備するという狭山弁護団の取り組みを全面的に支持・応援し、心ある学者、文化人、共闘の仲間や全国125の「狭山事件を考える住民の会」と連携しながら、断固として、狭山差別裁判糾弾闘争勝利まで闘う。
 狭山事件は部落差別が生んだえん罪である。われわれは、今回の最高裁による特別抗告棄却決定に断固抗議し、狭山事件の再審・石川さんの無罪をかちとるとともに、反動化と国権主義をはねかえし、あらゆる差別撤廃と司法における人権確立をめざして、闘いをさらに強めることをここに表明する。

       

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