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狭山事件-最新情報

            

狭山弁護団が東京高裁に新証拠を提出(2000.9/26)

再審棄却決定のあやまりを科学的に証明

     

 狭山事件再審弁護団は9月26日、狭山事件の異議申し立ての審理をおこなっている東京高等裁判所第5刑事部(高橋省吾裁判長)に対して、先に出された再審請求棄却決定(高木決定)があやまりであることを示す新たな証拠を提出しました。この証拠は「犯人のものとされる足跡に関する新証拠と補充書」です。

「地下足袋足跡」と押収された足袋

 狭山事件では、事件発生の翌日(5/2)深夜、真犯人が脅迫状の指定通り身代金受け渡し場所にあらわれ、これを警察が取り逃がすという失態がありました。
 この身代金受け渡し場所(佐野屋近辺)周辺の畑の中から後日採取されたとする「地下足袋(たび)足跡」があります。検察側はこの足跡と、石川さん宅から押収された足袋の足跡が一致するとして、石川さん有罪の決め手の一つと主張してきました。
 しかし、石川さん宅で押収された足袋は石川さんのお兄さんのものでした。石川さんはお兄さんよりも足のサイズが大きいためにこの足袋をはいて歩くことができませんでした。また、現場に残されていたとされる「地下足袋足跡」の大きさと、石川さん宅で押収された問題の足袋による足跡の大きさは違っていました。この点を弁護団は科学的な鑑定で明らかにし、「地下足袋足跡」と押収された足袋はむしろ再審開始をおこなうべき有力な証拠であると主張しました。
 このため、昨年7月に出された再審請求棄却決定において高木俊夫裁判長は、足袋の大きさが実際に違っている事を認めざるを得ななくなりました。しかし、高木裁判長は、押収された問題の足袋の側面にある傷と似た傷跡=「出っ張り」が現場から採取されたとされる足跡(石膏型)の一つに見受けられるとして、「両者は同一物であるがい然性(たぶんそうだという可能性)がすこぶる高い」と結論づけました。

押収足袋の傷跡と「地下足袋足跡」の「出っ張り」

 今回弁護団が提出した新証拠は、この高木裁判長の認定が誤りであることを科学的に証明するものです。
 鑑定をおこなったのは東京大学の山口泰助教授と鈴木宏正助教授です。
 両鑑定人は三次元スキャナーとコンピューターを用いて、「地下足袋足跡」と押収足袋をはいて作った足跡(=対象足跡)を立体的に計測し、双方の相違性を明らかにしました。
 棄却決定で高木裁判長は、現場から押収された「3号足跡」の石膏型にある「弓状にふくらんだ屈曲部分」が、「関根・岸田鑑定が指摘するとおり、押収地下足袋の『あ号破損』(側面傷跡=「出っ張り」)がつけられたものであるがい然性がすこぶる高い」として、両者は同一物であるとしています。
 この「3号足跡」とは、身代金受け渡し現場付近で採取された3つの「地下足袋足跡」の一つの石膏型です。また「あ号破損痕」とは、その「3号足跡」の右側面にある「出っ張り」のことです。この「出っ張り」が、石川さん宅から押収された地下足袋の「対象足跡」にある右足の地下足袋の底の外側のゴムのはがれた破損個所の「出っ張り」と一致するとしているのが、有罪確定判決において採用された検察側の「関根・岸田鑑定」の見解です。
 高木裁判長は、「関根・岸田鑑定に依拠して、押収地下足袋と現場足跡の証拠価値を認め、『自白を離れて被告人と犯人を結びつける客観的証拠の一つであるということができる』と判示した確定判決の判断に誤りは認めがたい」と言っています。

科学的に鑑定してみると

 検察側の「関根・岸田鑑定」は、3号足跡と対照足跡の写真撮影をおこない、その写真上に3点をとり、そうしてできた三角形の長さや角度を計測し、両者が一致する(下図)というものです。

3号足跡の写真に書かれた三角形

押収された足袋で作った足跡

 しかし、足跡というものは本来3次元的なものであり、縦、横、高さを持っている立体的なものです。今回鑑定をおこなった東京大学の山口泰助教授と鈴木宏正助教授も、写真という2次元の平面図画像で対象物の同一性を立証すること自体に無理があることを指摘しました。そして今回の新証拠で両鑑定人は、対象物の立体形状を3次元スキャナーでコンピューターに読みとり、コンピューター上で立体形状の比較検討をおこないました。その結果、3号足跡の破損痕とされる部分と対照足跡の破損痕部分は「3次元の形状としては相当に異なることは明らかであり、地下足袋の破損という同じ理由に起因した形状と断定することは誤りである」と結論づけました。また、断面形状を連続的に観察することによって、こぶ状の隆起が散在していることや90°以上に横に張り出した形状があることを発見し、そもそも3号足跡には「押収地下足袋によって印象されたものものと結論を導くだけの証拠価値はない」としています。
 具体的には下図のように、3号足跡と対照足跡を重ね合わせて、破損痕とされる付近の断面を比較検討すると、写真下側の陰が3号足跡で、上が対照足跡ですが、高さが大きく異なっていることがわかります。

破損痕(出っ張り)付近の断面。上になっている陰が対象足跡。下になっている陰が3号足跡。明確に違いが出る

 また、図1の関根・岸田鑑定が3号足跡と対照足跡の写真上に描いた三角形が同一であるとしたことに対して、実際に3次元スキャナーで読みとった3号足跡の立体図形上に描かれた三角形と関根・岸田鑑定の三角形とを図3のように比較検討すると、これらが同一の三角形ではないことも明確となりました。
 今回の新証拠によって、高木決定の誤りがまた一つ科学的に証明されたことになります。

a.b.cが岸田・関根鑑定の三角形、a'.b'.c'が新証拠が指摘した三角形。重ならないことが明らかに

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