元慶応大学生逮捕に関するコメント
2000年5月17日
部落解放同盟東京都連合会
部落解放同盟千葉県連合会
部落解放同盟埼玉県連合会
(1)このまま放置しておけば、以前にもましてエスカレートした脅迫行為や人権侵害行為が繰り返されるおそれがあるため、警察の逮捕はやむを得ない措置だったと考える。本人のためにも、またこれ以上被害者を出さないためにも、今回の身柄拘束はやむを得ない。
(2)当初、警察は桶川市の女子大生ストーカー殺害事件と同じようにわれわれの告訴を受け付けず、「被害届」で済ませたが、あいつぐ警察内の不祥事に対する世論の非難のなかでようやく重い腰をあげて逮捕に踏み切ったものと思う。
(3)彼の脅迫行為や人権侵害の背景には、いじめや過熱化した受験競争など現代社会のひずみやゆがみが存在している。彼自身もいじめによる人権侵害の犠牲者の一人であったので、彼個人を憎む気はない。佐賀のバスジャック事件や愛知の高校生による殺害事件など各地の若者による凶悪な事件があいついでいるが、われわれは真剣にその原因を探らなければならない。
(4)しかし、さしあたっては、これ以上彼に脅迫行為を続けさせてはならない。もちろんわれわれのなかから犠牲者を出すわけにはいかない。過去の経過から考えて、彼自身が、心から反省できない以上、このような身柄拘束もやむを得ない。われわれは刑事罰を望んでいるわけではない。この逮捕が、彼自身の更正の機会となることを強く望む。
(5)これまで人権侵害に対してほとんど対策らしい対策をとってこなかった司法当局がどのように対処するのか、しっかりと見守りたい。現行法ではこの種の脅迫行為や人権侵害行為を規制したり、取り締まる方法がなかった。法務省や人権擁護推進審議会が、人権侵害の深刻な実態を直視し、規制および被害救済の制度を確立すると同時に、人権教育・啓発の重要性を認識し、しっかりした人権教育・啓発法を制定することを望む。