インターネット上のサイトに、東京などの部落の所在地一覧が「○○区○○丁目、○○市○○町」と詳しく実名で掲載されていることが、部落解放同盟中央本部(以下解放同盟中央本部と略します)の調べで明らかになりました(2000年6月発覚)。
この差別書き込みは、掲示板を主としたサイトの「人権問題」というテーマの掲示板上に「地名はこちら」というように、自分のホームページのアドレスを掲載し、そのホームページにアクセスすると、部落の所在地一覧が閲覧できるというものでした。このホームページはアメリカのプロバイダー(インターネット接続業者)に開いたものです。解放同盟中央本部では、掲示板のサイトを開いているのが東京都北区在住の人であることをつきとめました。そして本人に連絡して話し合いを求めるとともに、アメリカのプロバイダーに削除要請をしました。こうしていったんはアメリカのホームページや日本の掲示板のサイトからこの書き込みは削除されました。
しかし、犯人はまた、アメリカのプロバイダーに部落の所在地一覧を掲載したホームページを設け、8月11日になって前回と同様の日本の掲示板サイトに再度差別書き込みをおこなうようになったのです。
解放同盟中央本部は7月24日におこなわれた法務省との交渉の中で、この「部落の所在地一覧の書き込み」の問題も含めインターネットに関わる差別事件に対する対応について追及した。また、個人情報保護法におけるインターネット上の情報のプライバシー保護と差別規制を盛り込むことやインターネットにおける部落差別撤廃・人権確立に向けた情報発進やネットワークづくりなどの施策の推進を提起しました。
今回掲載された東京の部落の所在地については、必ずしもすべてが正確な記述ではありません。しかし、就職差別や結婚差別の身元調査に利用される可能性を考えれば、悪質な差別書き込みとして見過ごすことができません。まさに新たな「部落地名総鑑」事件だと言えるでしょう。また、この犯人は何度も差別書き込みをするような確信犯で悪質な差別者であるが、部落差別についてはあまりにも無知です。安易に差別情報を流布し、その結果がどんな悲劇を生むか、どれだけ多くの部落民が苦しむか分かっていないのです。そして、この犯人の流した情報はたえず二次、三次情報として増殖し続け、ネットの普及に伴い社会的な影響力を持つことになるのです。
現在こうした事は野放し状態で、法務省や警察の有効な対応策もなく、法規制も整備されていません。私たち当事者や政府・自治体、プロバイダーによる、利用者に対する差別撤廃の教育と啓発の有効な仕組みが必要です。また、悪質な者については、国際協力も視野に入れた法的規制(警察による捜査も含めた)が必要だと考えます。
2000.6