主張

就職差別解消月間と公正採用選考の確立
企業と求職者の双方が正しい認識を



 東京都は1998年の差別身元調査事件発覚後、2000年から毎年6月を「就職差別解消促進月間」として啓発事業が取り組まれてきた。2019年から行なわれている就職差別解消シンポジウムもその一環である。

 今年度は6月9日に渋谷公会堂で「障がい者と共に働く社会~ダイバーシティとインクルージョンを具体化するために~」をテーマに行なわれる。主催は東京都と東京労働局であるが、就職差別撤廃東京実行委員会も特別賛同団体としてシンポジウムに協力している。昨年は中止となり、今年度はコロナ禍の開催であるため定数を大幅に減らしての開催となるが、参加者の安全と安心を守るために密を避けるなどの感染対策の結果であることを考えれば当然の対応である。

 一方で、こうした時期だからこそ、インターネットや動画などを活用して、より多くの雇用主や公正採用選考人権啓発推進員に情報を届けていくといった工夫は必要である。

 企業の採用選考時に「親の職業」や「出身地」などの就職差別につながる違法な情報収集が行なわれている現実があり、東京では毎年100件前後の通報がある。また、こういった情報を収集することは部落差別にもつながるものである。

 ハローワークは違反の通報があった企業に対して事実確認と是正指導を行なっており、是正指導に応じない企業に対しては職安法違反で30万円以下の罰金又は6ヶ月以下の懲役が科されることもある。

 企業として部落差別と就職差別をなくすために公正採用選考に取り組むことは、職安法上においても重要な企業の社会的責任である。

 そのために、企業が採用選考時の説明会や面接の際に「我が社は法令を遵守し、応募者の能力と適正に関わるもの以外の就職差別につながる違法な個人情報の収集はしない」と宣言し、「公正採用選考については行政のリーフレットや厚生労働省制作の公正採用選考を解説する5分動画を見てください」と説明することで企業や求職者の認識が深まり、就職差別につながる採用選考時の違法な個人情報の収集をなくすのに効果的な取り組みである。

 東京では東京都と東京労働局が中心となり、こういった「採用選考時の公正採用選考の周知」の取り組みが推奨されている。

 東京都産業労働局は企業向け啓発冊子「採用と人権」を作成し、都内30人以上の企業3万7千社以上に配布しており、配布時の添え状でもこの取り組みを推奨している。 これは、就職差別の撤廃と公正採用選考の確立に向けた最重要課題である。

 また、東京人権啓発企業連絡会などの民間企業においても行政の推奨に応え、「採用選考時の公正採用選考の周知」の取り組みが採用選考時の説明会や面接で推進されている。

 また、企業側だけではなく求職者側への働き掛けも重要であり、学校などの教育機関においても授業などで公正採用選考についての説明や、それが守られていない企業の面接で違反質問などがあった場合における通報先を教えておく取り組みも重要である。

 企業と求職者の双方が正しい公正採用選考の認識を持つことによって、就職差別の撤廃につながることになる。

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