主張

差別糾弾闘争を強化し
包括的差別禁止法(反差別法)を制定させよう



 今日、インターネット上を中心に部落差別事件は後を絶たない。特に交際や結婚時などの差別身元調査を誘発・助長する差別扇動である被差別部落の所在地の暴露(「識別情報の適示」)が全国的な問題となっている。

 インターネット上の「部落地名総鑑」といえる「全国部落調査」復刻版の出版差し止め裁判において東京高裁は、2023年6月28日「部落差別は本件地域の出身等であるという理由だけで不当な扱い(差別)を受けるものであるから、これが人格的な利益を侵害するものであることは明らかである」と被差別部落の所在地の暴露は違法だという判決をだした。この判決は「差別されない権利」を認めた画期的判決であった。確定判決となるためには、上告審での最高裁判所の判断が待たれるが、あらゆる社会場面で「差別されない権利」を踏まえた対応が求められる。

 「全国部落調査」復刻版については、被差別部落の所在地の暴露は違法だと東京高裁は判決をだしたが、被差別部落の所在地を画像、紀行文、動画などで暴露している「部落探訪」やその類似の情報は未解決である。都内では、文章と画像情報による「部落探訪」は、2015年12月以降、14区市に関係する20地区が暴かれている。また、動画版は2022年10月以降8区市に関係する12個の動画がアップされており、最低でも1000回以上再生されている。多いところでは13000回再生されている。関係する区市町村は、東京法務局に削除要請しても未だ削除されておらず、拡散され続けている。

 東京法務局は区市町村からの削除要請を受け人権侵犯調査処理規定に基づき対応しているが、東京法務局交渉(23年8月)では「現行の規定の中で、できることはすべてやっていきたいが限界がある」と答弁している。この限界を突破する法制度の確立が急務である。

 報道によると政府は、インターネット上の誹謗中傷など権利を侵害する違法な投稿への対策を強化するため、プロバイダー責任制限法を改正する方針を固め、通常国会に改正案を提出するとしている。改正案は、投稿の削除を申請する手続きや窓口の公表に加え、対応結果を一定の期間内に知らせることを運営企業に求め、投稿の削除を判断する基準を定めて公表することも義務付けることなどが盛り込まれている。

 一方、国連は世界人権宣言75周年(昨年)を契機に「包括的反差別法制定のための実践ガイド」を作成した。そこでは、「あらゆる形態と発現の差別を禁止すること」「実効性を確保できるだけの十分な資源、機能、権限を持った、独立かつ専門的な平等確保のための機関の設立を規定すること」など包括的反差別法に最低限必要な内容を提示し各国政府に包括的反差別法の制定を呼びかけている。

 急速に進化するAIも含めた高度情報化社会下において、政府は、国際人権基準を踏まえ、あらゆる差別の撤廃に向けた包括的な人権の法制度を早急に確立すべきである。

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