主張

戸籍謄本等不正取得事件
疎明資料請求で真相を解明し
本人通知の実施を



 栃木県のⅠ行政書士は、2021年8月4日、探偵会社・調査会社の依頼に応じて他人の戸籍謄本や住民票を不正に取得したとして兵庫県警に戸籍法違反などの疑いで逮捕され、同年9月14日略式裁判で罰金刑(100万円)に処された。

 Ⅰ行政書士は、2017年ごろから3500回にわたり戸籍情報を不正に請求し、浮気調査・DV被害者追跡調査・身元調査などを行なう探偵会社・調査会社などに戸籍情報を提供し、兵庫県警の推計では7000万円以上の収入を得ていたという。兵庫県警は探偵会社・調査会社55社から事情聴取したが、立件したのは、3500件の内9件21通のみである。他は限りなくグレーであるが立件しなかった。

 警察が押収していたⅠ行政書士の職務上請求書が日本行政書士会連合会に返還され、部落解放同盟中央本部の要請により「連合会」が都府県別にまとめた。それによると、2018年1月26日から2021年4月23日までに、全国で2542枚、東京377枚の職務上請求書が出されていたことが分かった。

疎明資料請求の実施を

 立件されたのが9件のみでその中に東京はなかったため、現在12区が導入している本人通知制度(戸籍等が不正に取得された本人にその旨を通知する制度)は実行されていない。

 差別身元調査の被害者の救済に向け、また、自己情報のコントロール権の観点からも本人通知制度を導入している区市町村は、早急に本人通知すべきである。そのために不正取得の実態の解明に向けI行政書士に対して、①依頼者とI行政書士の契約書または業務委託簿の写し、②職務上請求書の払い出し番号が記載されている帳簿の写し、③依頼者を証明する資料など職務上請求書に記載されている依頼者の確認などのために疎明資料請求をすべきである。

 すでに京都府内の市町村や横浜市などが疎明資料請求をし市町村が不正だと判断すれば本人通知を実行している。京都府内では12市町村が疎明資料請求をし8市町村が本人通知を実行している。また横浜市も38件中4件について本人通知している。これは不正取得件数が9件のみではなく、さらに多くの不正取得が存在しているという事実を示している。55社の調査会社が関与し7000万の報酬を得ていたことからして9件のはずはない。都内にも身元調査などの被害者がいるはずであるが被害は放置されているのが現状である。

 12区は戸籍謄本等の不正取得の重大性と本人通知制度の意義を確認し疎明資料請求をして不正取得の実態を明らかにすべきである。また、本人通知制度を導入していない区市町村は、被害者が存在している事実を重く受け止め、本人通知制度を導入すべきである。

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