事件発生、不当別件逮捕から57年、確定有罪判決から46年、狭山事件の再審を求める闘いは、最大の山場を迎えている。
これ以上、再審審理が長期化することは人道上においても許されない。東京高裁第4刑事部・大野勝則裁判長は「無実の人をえん罪から救済する」という再審の理念、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に従って、早急に事実調べを行ない、狭山事件の再審を開始すべきである。
再審の審理においては、新証拠と旧証拠を総合的に見て、判決に疑問があるかどうかを判断するとされている。東京高裁は弁護団と検察官、双方の主張が出揃った段階で事実調べの必要性を判断するとしており、狭山弁護団は現在、裁判所の判断基準に則って新証拠により有罪判決を完璧に突き崩していくための論点を整理し、鑑定人尋問などの事実調べを請求していくとしている。まさに第三次再審は最終段階を迎えている。
狭山弁護団は、2009年の証拠開示勧告以降、現時点までに241点もの新証拠を裁判所に提出し、石川さんを有罪とする根拠は全て覆されている。再審の要件である確定判決に合理的疑いを明確に生じさせる新証拠が次々と出されているにも関わらず、事実調べ実施に踏み切らない東京高裁、反証・反論を繰り返して審理を引き伸ばす検察官の不誠実な姿勢に対して、私たちは断固抗議する。
確定判決を根底から覆す科学的新証拠の中でも、下山第2鑑定は、検察側も反証できない決定的な新証拠だ。石川さん宅から発見された被害者のものとされる万年筆は、被害者が使用していたものではないことをインクの構成元素の科学的分析から100%証明し、確定判決がいう「インク補充説」も完全に突き崩し、証拠の捏造までも明示した。
警察による証拠捏造の疑いが濃い「万年筆」で石川さんが殺人犯にでっち上げられたのであるならば、「万年筆」は被害者のものではなく、完全なニセ物であることを科学的に証明した下山鑑定人への尋問を突破口に、証人尋問、現場検証などの事実調べを実施させなければならない。
狭山事件の再審請求は42年以上になるが、これまで事実調べは一度も行なわれていない。再度確認すべきことは、事実調べが実施されない再審裁判は必ず棄却されており、事実調べが実施された再審裁判は必ず再審が開始されているという事実である。「事実調べなくして再審開始なし」を合言葉に、再審開始の必要条件である事実調べの実施が突破すべき最重要の関門であることを改めて確認しよう。
最終段階を迎えた第三次再審の闘いは、まさに今が勝負。狭山東京実行委員会は、新たに4種類の要請ハガキを作成した。2月~3月、連日、大野裁判長のもとに事実調べを求めるハガキを送る運動を提起し、すでに開始されている。東京都連のHPからハガキのひな形をダウンロードして多くの支援者の方々に取り組んで頂きたい。また、集会や学習会でも活用できる狭山の現状と課題を学べる動画配信も企画している。地域・職場から、今できる最大限の取り組みを展開していこう。
コロナ禍において、全国各地の狭山集会や学習会、現地調査などの取り組みが中止となる中、各地でさらなる支援の要請をすることが困難な状況に耐えながら、先日82歳になった石川一雄さんは体調管理・体力維持に努めつつ、全国の支援者への手紙やネット上でのメッセージ配信など、今できる闘いに精一杯の力を注いでいる。一雄さん、早智子さんの切なる思いを受け止め、一人一人の狭山を今こそ動かそう。そして、2021年こそ事実調べを実現し、再審開始決定を勝ち取ろう。